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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第46話 麗奈の提案

「本当ですか!?」

 水が見えるという結衣の言葉に村の人達が穴の周りに集まった。

「はい、底の方でキラキラと光っています」

「おお……。しかし、随分と深そうですね……」

 穴の中を覗き込んだゴフルさんは少し困ったような顔でそう言った。私も覗いてみると確かに底まではかなりの深さがある。

「とりあえず、一度汲みあげてみましょう」

 ゴフルさんの指示で一人の女性が釣瓶を持ってきた。縄の端を男性が持ち、穴の中へ釣瓶を落とす。

「おや……足りないようです。もっと長い釣瓶はありませんか?」

 縄の長さが足りなかったようでピンと張ってしまっている。

「いえ、これが一番長いものです」

 釣瓶を持ってきた女性が首を横に振った。

「そうですか……。では、縄を継ぎましょう。どなたか縄を持ってきていただけませんか」

「あ、家から取ってきます」

 女性は駆けていくと、広場の近くにある家から縄束を持ってきた。

「これだけの長さがあれば十分でしょう。それを端に結んで下ろしてください」

 男性が手を緩めると縄がするすると滑っていく。そして縄が途切れそうになったところでようやく止まった。

「相当深いみたいですね……。縄が足りないのではと思いましたよ。それではゆっくりと上げていただけますか。角で縄を切らないように気をつけてください」

 二人の男性が少しずつ縄を手繰っていく。

「こりゃあ、いくらなんでもちょっと深すぎるんじゃねえかい?」

 いくら手繰っても桶は一向に姿を見せず、数分かかってようやく引き上げた。男性は額から汗を流している。

「水は十分綺麗なようですが、一階で汲みあげることの出来る量も考えると実用的ではありませんね……」

 汲んだ水を一口飲んでゴフルさんは複雑な表情を浮かべた。村の人達もがっかりした様子で肩を落としている。

「やはりこの村に井戸は無理なのでしょうか」

 ブルノさんはため息をついて嘆いた。

「皆様、本当にありがとうございました」

 ゴフルさんは残念そうにしながら私達に頭を下げた。

「折角岩盤を何とかしたのに……麗奈、何とかならない?」

「魔法でどうにかなる問題でもありませんし……これだけ深くては……」

 結衣が懇願するように私を見る。

「あのゴフルさん、此処は鉄鉱石が採れるのですよね」

「ええ、そうですが」

 私の質問にゴフルさんが首を傾げる。

「それでは鉄鉱石を製錬出来る人はいますか?」

「製鉄なら俺が出来るぜ」

 つるはしを持っていた男性が手を挙げた。

「では鉄を加工出来る人はいますか?」

「今此処にはいませんが、何人かいますよ。あの、それがどうかしましたか」

「はい。水を汲み上げることは出来そうです。ただ、その為には皆様に協力していただかなければならないのですが……」

 私がそう言うとゴフルさんは目を見開いた。

「汲みあげることが出来るというのは本当ですか!? それが本当なら協力は惜しみません」

 そう言ってゴフルさんが村の人達を見ると、皆頷いて見せた。

「それでは私の言う物を作っていただきたいのですが――ブルノさん、机をお借り出来ますか?」

「ええ、勿論構いませんよ」

「私達はどうすれば良いでしょうか」

「ゴフルさんは鉄の加工を出来る人に協力していただけるようお願いしていただけませんか」

「そんなことでしたらお安いご用です」

「ありがとうございます。作っていただきたい物については明日お伝えします」

「分かりました。では特に本日することはないのですね」

「ええ、明日からお願いします」

「畏まりました。では私達は失礼させていただきます」

 ゴフルさん達は頭を下げると、帰っていった。私達もブルノさんの家に戻る。


 私達がブルノさんの家に帰ると、ハンナさんがアンベルを淹れてくれた。

「結衣、紙とペンは持ってきてたよね。出してくれる?」

「うん、鞄は部屋にあるから取ってくるね」

 結衣がパタパタと広間から出ていく。

「それにしても麗奈様、一体どの様な方法で水を汲み上げるのですか?」

 シルヴィが思案顔で唸っている。

「うーん……それは見てのお楽しみだよ」

「そうですか……」

 シルヴィが不満そうにしていると、結衣が鞄を手に戻って来た。

「私も拝見させていただいてよろしいですか?」

「はい、隠すようなものでもありませんので」

「ありがとうございます」

 ブルノさんはアンベルを持って私の向かいに座った。私は結衣からペンと紙を受け取り、必要となる部品の図面を書いていく。

「私にはこれが一体どういう物になるのか想像もつきません。鉄管の中を水が通るということは分かるのですが……」

 シルヴィが私の書いた図面を手にとっては首を傾げている。

「麗奈はポンプを作るんだよね?」

「うん、そうだよ」

「ポンプ……ですか。ポンプとは一体何でしょう?」

「水を汲み上げるための機械です。手で汲み上げるよりも遥かに早く水を汲むことが出来ます」

「ほほう、そういうものがあるのですね」

 私が簡単に説明するとブルノさんとシルヴィが感心した様子で驚きの声を上げた。


「よし、出来たよ」

 結局十分程で図面は完成した。

「お疲れ様。相変わらず凄い速さだね」

「ありがとう。そうでもないよ」

「どうしてあの速度で失敗をせずに書くことが出来るのでしょうか……」

 シルヴィが小声で漏らしたのが聞こえた。驚愕した様子で私の手元を見ている。

「確かに私も一度麗奈の頭の中を覗いてみたいよ。あれ、でもこれ長さとかが書かれていないけど……」

 結衣にも聞こえていたのだろう。シルヴィの言葉に頷きながら図面を見た結衣は首を傾げた。私の書いた図面は形だけで、それぞれの長さなどは書かれていない。

「うん、それは今から測りに行くよ。ブルノさん、少し広場へ行ってきます」

「ええ、夕食は昨日と同じ時間ですので」

 私達は家を出て広場へ向かった。


 私達が広場へ行くと村の人達はほとんどいなかった。女性が数人、端の方で話しているだけだ。

「まずは穴の大きさかな」

 私は穴の上に乗せられていた板を動かした。人が落ちないようにしているのだろう。

「ところで、どのようにして測るのですか?」

「すぐに終わるよ」

 結衣がそう言うとシルヴィはきょとんとしている。

「後は深さだね」

 私は手頃な石を穴に落とした。少しすると石が水に当たった音が聞こえる。

「終わったよ。戻ろうか」

 私が板を戻して歩き出すとシルヴィは理解できないといった様子でその場に固まっている。私と結衣が少し歩いたところでシルヴィが追いついた。


「おや、随分と早いお帰りですね。もう測り終えたのですか?」

 私達がブルノさんの家に戻り広間へ入るとブルノさんが驚いた様子で奥から出てきた。

「はい。後は先程の図面に書き込むだけです」

 結衣から図面を受け取り部品の長さや大きさを書き加えていく。

「あの、結衣様」

 シルヴィが何かを決心した様子で結衣に話しかけた。

「ん、何?」

「先程、麗奈様はどのようにして計測したのでしょうか?」

「ああ、目測だよ」

「目測で良いのですか!?」

「あはは。麗奈の目測は、少し言葉の意味が変わるんだよ。精密目測とでもいえば良いのかな? 深さは石を落した時の音で測ったと思うよ」

 結衣が自分の言葉に苦笑している。

「やっぱりそうですか……」

 図面に書き込みながら横目でシルヴィを見ると呆れた様子で笑みを浮かべながら首を横に振っていた。


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