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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第49話 帰宅

 クノム村を出て三日後、私達はラクスに帰ってきた。リフランを出発した日からは十日以上経っている。

「ただいま」

「あっ、お帰りなさいませ」

 私達が扉を開けると掃除をしていたメイドが一瞬驚き、そしてすぐに頭を下げた。

「リビングにアンベルを持ってきてくれるかな?」

 私がそう言うとメイドは頭を下げてキッチンの方へ歩いて行った。私達はリビングへ向かい、ソファに腰を下ろす。

「うーん、やっぱり我が家は落ち着くね~」

 結衣は荷物を机に置くと伸びをした。

「そうですね。やはり馬車の旅は疲れます」

 シルヴィも背もたれに深く身体を預けている。

「二人ともお疲れ様。今日はもう中途半端な時間だし、お店は明日からにしようか」

 時刻は既にお昼を過ぎている。長旅の疲れもある分、今日はゆっくりと休んだ方がいいだろう。

「失礼します」

 私達が休んでいると扉がノックされ、ミストとヴァルドの二人が入ってきた。ミストの持っているトレーの上には湯気が立つカップが三つのっている。

「お帰りなさいませ。先程皆様が戻られたと聞きました」

 カップを机の上に置き、二人は頭を下げた。

「ただいま。私達が居ない間、何かあった?」

「はい。以前麗奈様が馬車に轢かれた女の子をお助けになりましたが、女の子とその父親が皆様にお礼を申し上げたいと連日お越しになっています」

「連日っていうと、もしかして今日も来てたの?」

「ええ、皆様が戻ってこられる少し前にお帰りになりました」

「そうなんだ……」

 まさか毎日来ているとは。

「なんだか悪いことをしちゃったね」

「また明日もお越しになると仰っていました」

「わかった。ありがとう、ヴァルド」

「いえ」

 ヴァルドは静かに頭を下げた。

「ミスト、お店の方はどうだった?」

 私達が留守にしている間、ラクスはミストに任せていた。

「変わったことであれば、皆様が出発された数日後に姫様が一度お越しになりました」

「姫様ってことは、エルが来たの?」

 結衣がアンベルに口をつけながら尋ねる。

「はい。皆様が不在であると申し上げると残念そうにしておられました。姫様は、特に用があるわけではないので気にしないでください。また折を見て遊びに来ます。と私に言付けをして帰られました」

「他に何か変わったことはあった?」

「いえ、特にはございません。お客様は毎日来られていますが、依頼がある方はすべて井戸替えです。殆どの方は皆様が不在の件を伝えますと、また後日お越しになると仰っていました」

 結衣は依頼の多くが井戸替えと聞いて苦笑している。

「うん。ありがとう」

 ミストは頭を下げると、ヴァルドと共に部屋から出て行った。

「随分と来客があったようですね」

 シルヴィが二人の話を聞いて驚いている。

「男性は明日も来るみたいだし、エルにも今度来た時に謝っておかないとね」

 結衣はそう言うとソファに身体を預け目を閉じた。やはり疲れていたのだろう。少しするとシルヴィも静かに寝息を立てていた。その後、私も少し休息をとり、目を覚ましたのはメルナとカレルが帰ってきた時だった。お風呂に入った後、二人とクノム村でのことを話しながら夕食をとり、食後激しい睡魔に襲われた私達は早々にベッドへ入った。


 翌朝、私達はいつものように朝食を食べた後、メルナとカレルを見送りラクスへと向かった。

「なんだか久しぶりだね」

 結衣は自分の席に座ると店の中を見回している。

「十日以上留守にしていましたからね」

「それじゃあ、久々だけど今日も頑張ろう。扉を開けてくれる?」

 入口の近くに居たメイドは頷くと扉を開けた。

「あーっ!」

 メイドが扉を開いた瞬間、結衣が突然大きな声を出す。メイドは驚きで肩をすくめた。

「ゆ、結衣様? どうされたのですか?」

 シルヴィが慌てた様子で尋ねる。

「大変なことを忘れていたんだよ」

 結衣はそう言うと信じられないといった顔で首を横に振った。

「大変なことというのは……?」

「うん、皆で開店の掛け声をするのを忘れていたよ」

「えっ」

 真面目な顔で言った結衣に、シルヴィは暫くきょとんとした後肩を落としてうな垂れた。

「明日は忘れないようにしないと」

 結衣の言葉にシルヴィは苦笑を浮かべている。

「そういえば麗奈様」

 シルヴィは気を取り直すように私に尋ねた。

「ん、どうしたの?」

「ここ数日、ずっと考えているのですが、クノム村で作った井戸は結局どのようにして水を汲み上げているのでしょうか? 井戸の奥から水を押し上げていることはわかるのですが、一体それをどのように人間の力で出来るようにしているのか、はっきりしないのです。おそらく歯車を使ったのではないかと思っているのですが」

 シルヴィは顎に手を当てて唸っている。

「歯車で合ってるよね?」

「うん。大きさと歯の数が違う歯車を組み合わせると小さな力で大きな力を出せるからね」

「やはりそうでしたか」


 それから暫く私達が雑談していると店の扉が開き、背の低い男性が入ってきた。

「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」

 メイドに案内されて男性は私の向かいに座る。

「本日はどのようなご用件ですか?」

「はい、こちらで井戸替えをしていただけると聞いたのですが」

 男性がそういった瞬間、結衣の苦笑している顔が私の頭に浮かぶ。

「井戸替えですね。お任せください」

「麗奈様、井戸替えであれば私が行ってきます」

「ありがとう、それじゃあお願いしていいかな」

 それから特に問題もなく話は進み、契約書を書き終えるとシルヴィは男性と共に出て行った。

「そういえば麗奈、今ふと思ったんだけど」

 シルヴィを見送った後、今や自身の定番となっている果実入りのアンベルを飲んでいた結衣が突然口を開く。

「ん、何?」

「うん。この前麗奈が女の子を助けた時のことを考えていたんだけど、女の子のお父さんって多分魔法使いだよね?」

「そうだと思うよ。男性の髪は緑色だったし、風属性が得意なんじゃないかな」

「やっぱりそうだよね。あの時はそこまで頭が回らなかったけど……。あ、別に、だからどうってわけじゃないんだけどね」

 結衣はそう言って笑うと特別甘いアンベルに口をつけた。


 シルヴィが井戸替えに向かって一時間程経った頃、店の扉が開いた。

「いらっしゃいませ! あ、シルヴィ。随分と早かったね」

 立ち上がった結衣は再び腰を下ろす。

「ええ、場所も遠くではありませんでしたから」

「お疲れ様」

「それにしても、私達ってやっぱり井戸屋さんなんじゃないかな」

 結衣の言葉にシルヴィは複雑な笑みを浮かべる。

「まあ確かに、そろそろ井戸以外の依頼も来てほしいね」

「麗奈様、お客様がお越しになりました」

 私達が話しているとヴァルドが入ってきた。

「もしかして女の子の……」

「はい。リビングでお待ちいただいております」

「わかった。すぐに行くよ」

 ヴァルドは一礼して戻っていった。私達も一度店を閉めてリビングへ向かう。


「お待たせしてすみません」

 私達がリビングへ入ると女の子と男性は立ち上がって頭を下げた。

「お忙しいところ申し訳ございません。先日は本当にありがとうございました」

「いえ、こちらこそ何度もお越しいただいたのに不在で申し訳ございませんでした。どうぞお掛けになってください」

 二人に座るよう促し、私達も向かいに腰を下ろす。

「何か飲み物を」

「畏まりました」

 メイドは頭を下げると部屋を出て行った。

「そういえば自己紹介を忘れておりました。大変失礼いたしました。私はアルベール・グレインと申します。こちらは娘のシャルロットです」

 アルベールさんは自己紹介をすると頭を下げた。シャルロットも名前を呼ばれ私達に一礼する。

「失礼します」

 私達も自己紹介を済ませたところで扉がノックされメイドが入ってきた。それぞれの前にカップを置いていく。

「ありがとう」

 メイドは一礼すると部屋の端に下がった。

「それにしても娘さんが元気なようで安心しました」

「はい。皆様のおかげです。本当に何とお礼を申し上げてよいやら……」

「痛かったりすることはないの?」

「うん。あ、はい。大丈夫です」

 結衣が尋ねるとシャルロットは幼さを残す顔に微笑みを浮かべて頷いた。

「本当に無事なようで良かったです」

「ええ、馬車に轢かれたのが嘘のようです。あの時皆様がいなければと思うと……」

 アルベールさんはそう言うと目を閉じて首を横に振る。

「最初見たときは驚きました」

「私の治癒の魔法ではどうにもならないほどの怪我でしたからね……」

「私も魔法使いではありますが、あのような魔法は初めて見ました。皆様はシャルロットの命の恩人です。どれだけ感謝してもしきれません。何か是非ともお礼をさせてください」

「いえ、お礼なんて結構です。偶然近くに居ただけですから」

 私がそう言って断るとアルベールさんは無言で首を振った。

「そんなことを仰らずに。何かお礼をさせていただかなければ私の気がすみません」

 アルベールさんが有無を言わせない表情で言う。

「お話し中失礼いたします」

 私達が話していると扉がノックされヴァルドが入ってきた。

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