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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第41話 出発前日

「二人ともお疲れ様」

 閉店の時間になり私は席を立つ。

「結局あれから誰も来なかったね」

 開店と同時に二件の依頼が来たということもあり、もしかしたら午後も多くの依頼が来るのではないかと話していたが、結局ブルノさんが帰った後にお客さんが来ることはなかった。

「今日の依頼は三件でしたね。二日目ならこんなものでしょうか?」

「順調だと思うよ。特別大きな依頼も来たし」

 仕事を終えた私達はリビングで一息をつく。

「それで麗奈、明後日のことだけどどうするの? 随分と長い間家を空けることになりそうだけど……準備とかしないといけないよね」

「明日は少し買い物に行く必要がありそうだね。シルヴィ、クノム村っていうのはどんな所なの?」

「そうですね……私も行ったことが無いので詳しいことは分からないのですが……あっ! 少々お待ち下さい」

 シルヴィは何かを思い出したように立ち上がると小走りでリビングを出て行った。

「どうしたのかな?」

「忘れ物でもしたのかもしれないよ」

 私と結衣が雑談して待っているとシルヴィが一冊の本を持って戻って来た。

「お待たせしました」

「シルヴィ、その本は?」

 私が尋ねるとシルヴィは本の表紙を見せた。

「リフィレス王国風土・南東部」

「はい。私がエスコーラで地理について学んでいた際に使っていた本です」

「そこにクノム村のことが載ってるの?」

「はい――ここです」

 シルヴィが机の上に本を開く。

「人口は三千人程で少し大きめの村ですね。大きな鉱山があり、気候はリフランよりも温暖で随分と乾燥しているみたいです。――大したことは書いてありませんね……」

 シルヴィは少し落胆した様子で本を閉じた。

「今のだと特別な準備も必要なさそうだね。着替え位かな?」

「私は家から持ってきたので問題ありません」

「それなら私と結衣の分だけだね。明日の朝にでも買いに行こうか。悪いけどシルヴィ、その間お店をお願いできるかな?」

「ええ、お任せください」

「さて、それじゃあそろそろお風呂に入ろうか」

「あっ、そう言えば今日は私が担当でした。お湯を入れてきますね。十分程したら来てください」

 シルヴィは本を持つと部屋を出て行った。


「ん、今日は二人とも早かったんだね」

 お風呂に入った私達が広間へ行くとメルナとカレルの二人が夕食の食器を用意していた。

「あっ。はい、先程帰りました」

 私達が座るとヴァルドが葡萄酒を注いでくれる。結衣は勿論搾り汁だ。

「今日も楽しかった?」

「はい! 今日は共通語を少し学びました」

 カレルが嬉しそうに言う。

「カレルは共通語を覚えたいって言ってたもんね」

「結衣も早く書けるようにならないと」

 私が意地悪を言うと、結衣はばつが悪そうに苦笑した。

「あはは……頑張るよ」

「そう言えば結衣様は共通語を読むことが出来るのですよね」

「あ、うん。そうだよ」

「書くことは出来ないのですか?」

 カレルが不思議そうに首を傾げる。

「うーん……何て言うのかな。私の場合はカイゼルさんの魔法でだから、読めるというよりも分かるって感じなの。だから書いてあることは分かっても文字は……」

 結衣は頬を掻いている。

「なるほど……。麗奈様は読むことも書くことも出来るのですよね」

「私も最初は結衣と同じだったけどね」

「そうなのですか!?」

 横で聞いていたシルヴィが驚きの声をあげた。

「うん、ついこの間までは書けなかったよ」

「何の違和感も無く使っていたので、てっきり最初からだと思っていました」

「あ、シルヴィ。私は普通の人間だから、麗奈と一緒にしないでね」

 横目で私を見ながら結衣は微笑む。

「それだと私が普通の人間じゃないみたいだけど……」

「えへへ、冗談だって。さっきの仕返しだよ」

「もう」

 そう言って笑う私と結衣を見て、三人は乾いた笑みを浮かべていた。


 翌朝、メルナとカレルを見送った後、私と結衣は買い物へ行くことにした。

「それじゃあシルヴィ、悪いけどお店よろしくね。お昼までには戻るから」

「ええ、お任せください」

 家を出た私達は商業区を西へと歩いていく。以前にメイド達の家具を買いに行く際、途中に何軒か服を売っている店を見つけていた。

「ねえ麗奈、着替えはどれくらい持って行った方が良いと思う?」

「馬車で三日かかるって言っていたから、クノム村で泊まる可能性もあるし、途中で洗濯するとしても三日分位は必要なんじゃないかな――あ、此処だよ」

 私達が店内へ入ると様々なワンピースが売られていた。

「麗奈、これはどうかな?」

 結衣が水色のワンピースを手に取る。

「良いんじゃないかな? 似合うと思うよ」

「えへへ、そう? それじゃあこれを買おうかな。麗奈は?」

「うーん、どれにしようか」

「これなんてどう?」


 それから何軒か見て回り、私達はそれぞれ四着ずつ服を買った。

「やっぱりワンピースが多かったね」

「この世界の主流なんじゃないかな」

 結衣は四着共、私も三着がワンピースだ。街を歩いている女性も殆どがワンピースを着ている。

「ただいま」

「いらっしゃいませ! あ、おかえりなさいませ。服は見つかりましたか?」

 私達が店に入るとシルヴィは暇そうに座っていた。

「うん、買ってきたよ。その様子だとお客さんは来なかった?」

 私達もメイドに服を預けて席に座る。

「いえ、一件ありました」

「どんな依頼だったの? 随分と早く終わったんだね」

 結衣が尋ねるとシルヴィは苦笑した。

「開店して少しで井戸替えの依頼がありました」

「また井戸替えか~。もしかしたら私達は井戸屋さんなのかもしれないね」

 結衣もそう言って苦笑する。

「井戸屋さんって何?」

「さあ?」

「こちらが報酬です」

 そう言ってシルヴィが金貨を一枚取り出した。

「あれ? 報酬は一ケリルだったの?」

「ええ、何でも急ぎでとのことだったので」

「そうなんだ。うん、お疲れ様」


 その後はお客さんも来ず、後少しで閉店という時間になった。

 バン!

 突然大きな音がした。外からはざわめきが聞こえる。

「どうしたんだろう? 何かあったのかな?」

 結衣が様子を見に行こうと席を立つと、店の扉が勢いよく開かれ、大慌てといった様子で男性が駆け込んできた。

「お、おい大変だ! 前で子供が馬車に轢かれた! 優秀な魔法使いなんだろ! 助けてくれ!」

 男性は入ってくるやいなや、大声で怒鳴った。

「えっ!? 麗奈様!」

「うん!」

 私達は急いで店を出た。

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