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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第38話 開店前

 お風呂に入った私達が広間へ行くと既に夕食の用意が出来ていた。私達が席へ座るとヴァルドが飲み物を注いでくれる。

「あー……葡萄酒?」

「いえ、葡萄の搾り汁にございます」

 結衣が尋ねるとヴァルドは少し笑いながら答えた。

「私は葡萄酒を頂けますか」

「畏まりました」

 シルヴィはヴァルドに葡萄酒を入れてもらう。

「麗奈様はいかがされますか」

「私は搾り汁で良いかな」

 私も葡萄の搾り汁を入れてもらい、三人で乾杯する。

「今日は魔法の練習もしたからお腹が空いたよ」

 そう言って結衣は運ばれてきた料理に早速手をつける。

「それにしても、結衣は一気に上達したね」

「私も自分があんなに魔法を使えるようになるなんて思って無かったよ……。シルヴィのおかげだね」

 結衣の言葉にシルヴィが頬を染める。


「失礼します」

 食後、私達がリビングでのんびりとしていると扉がノックされ、メルナとカレルが一人のメイドと一緒に入って来た。

「麗奈様、私達が不在の間、ミストさんにメイド長を代わっていただこうと思うのですが……」

 メルナがそう言うとメイドが頭をさげる。

「うん、二人が決めたならそれでいいと思うよ」

「よろしくお願いします」

 ミストは短めの緑がかった黒髪が特徴的で身長は私よりも少し高い。

「あ、そう言えば」

「どうしたの? 麗奈」

「二人に聞こうと思っていたんだけど、お店の宣伝どうだったかな?」

 私が尋ねると二人は微笑んだ。

「シルヴィア様が仰ったように、既に相当の噂になっていました。ただ、看板は上がっているものの、どういったお店なのかよく知られていないようでした。私達が話すと興味を示す人は結構いたように思います」

「そうなんだ。そんなに噂になっていたんだね」

「はい。建物の大きさも然ることながら、姫様が出入りされていたことの影響が大きいようでした」

 確かにエルが何度も来ていたことを考えれば、噂になるのも当然だったのかもしれない。

「期待できるかもしれないね。麗奈」

「うん、初日からお客さんが来てくれるかも。二人ともありがとう」

「いえ、お役に立てて何よりです。それでは失礼いたします」

「あ、ミスト」

 メルナ達と部屋を出ようとしたミストを呼びとめる。

「何でしょうか」

 急に呼ばれてミストは緊張した様子で返事をした。

「ああ、ごめん。何か飲み物を貰えるかな」

「畏まりました。少々お待ち下さい」

 ミストはホッとした様な表情を浮かべると、頭を下げて出て行った。

「そう言えば麗奈、ずっと思っていたんだけどね」

「ん、どうしたの?」

「最近結構買い物してるけど、エルから貰ったお金、あんなに使っちゃっていいの?」

 結衣がそう言うとシルヴィも少し気まずそうな顔で私を見てきた。

「あの、色々と買っていただいた後で聞くのもどうかとは思うのですが……本当によかったのでしょうか?」

「あはは……。実はエルからお金を預かるときに沢山使うように念を押されて……おかしな話なんだけどね……。使い切るつもりで使ってほしいと言われているから」

 私達が苦笑しているとミストが入って来た。

「アンベルをお持ちしました。あの、皆様どうかされましたか?」

 私達の様子を見たミストが不思議そうに尋ねる。

「ううん、何でもないよ。ありがとう」

「いえ、それでは失礼します」

 ミストはアンベルを机に置くと部屋を出て行った。

「ところで話は変わりますが、お二人はこの国のことについてあまり詳しくないのですよね?」

 シルヴィがアンベルを一口飲んでから口を開く。

「うん。この国と言うよりは、この世界についてほとんど知らないかな」

「それでしたら、商業区での営業についてもご存知ないのですね」

「何か特別な決まりとかあるの?」

 結衣が尋ねるとシルヴィは首を横に振った。

「特別何かがあるというわけではありませんが、税についての決まり等はございますね」

「税か……。シルヴィは詳しいの?」

「そうですね、一通りは把握しています。お任せいただけるのであれば、私が申請等をさせていただきますが……」

「本当に? そうしてくれるととても助かるよ」

「分かりました。お任せください」

「ありがとうシルヴィ。私も早く覚えるようにするよ」

「お店の宣伝も何とかなったみたいだし、これで心配事は無くなったね」

「後はお客さんが来るのを待つだけかな。さて、それじゃあ明日の開店に備えて今日は寝ようか」

 残ったアンベルを飲んで、私達は部屋に戻った。


 翌朝、私達が朝食を食べて少しすると馬車が来た。既に用意を済ませて待っていたメルナとカレルの二人が馬車に乗り込む。以前にお城の給仕長から貰った白と紺のワンピースを着ている。

「それでは行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「二人とも頑張ってね」

 御者台に座った男性が合図を送ると馬車は走って行った。私達は見えなくなるまで見送ってから家に入った。

「そう言えば此処からどれくらいかかるの?」

「馬車で一時間位ですね」

「一時間か。そんなに遠くないんだね」

「さて、それじゃあ二人もエスコーラへ行ったし、私達も頑張ろうか」

「そうですね」

「気合を入れないとね」

 私達はラクスのスペースへ向かう。

「あ、丁度良い所に。ミスト」

 途中、廊下を歩いていたミストに声をかける。

「麗奈様いかがされましたか?」

「えっと、今日から開店だから、ラクスに常時二人程メイドをお願いできないかな」

「なるほど。畏まりました」

「ありがとう。よろしくね」


 私達がラクスへ入って少しすると、ミストにお願いした通り、メイドが二人やって来た。

「お待たせいたしました。私たちは何をいたしましょうか?」

「普段は掃除とかかな。お客さんが来たときは飲み物を出したりしてくれると助かるよ」

「畏まりました」

 二人は一礼すると早速掃除に取りかかった。

「結衣様、何を悩んでいるのですか?」

 腕を組んで唸っている結衣を見てシルヴィが首を傾げる。

「ああ、うん。依頼を受けるときはどうすればいいかなって思って。報酬とか」

「そうだね。確かに報酬はどうしようか? 交渉で決めるのが良い気はするけど」

「そうですね。おそらくそれが良いと思います」

「何か書いた方が良いのかな?」

 そう言って手元の紙を見せる。

「はい。依頼内容と報酬を書いた紙に依頼人の名前を書いてもらい、その下に麗奈様の名前を書いてください。それで問題は無い筈です」

「契約書みたいなものだね」

「あー、そうなると私も文字を書けるようにならないとね……」

「確かにその方が良いかもしれませんね。そう言えば、麗奈様は文字を書くことは出来るのですか?」

「うん、共通語なら書けるよ。共通語で良いんだよね?」

「はい、問題ありません」

「私も麗奈みたいに記憶力が良ければな~」

「結衣ならすぐに覚えられるよ」

「頑張って覚えないとね。さて、それじゃあそろそろ開店かな?」

「そうだね。そろそろ開けようか」

「あ、それじゃあ……」

「ふふ、そうしようか」

 結衣がシルヴィに何事か囁いた後、私に笑顔で視線を送る。私が頷くと皆で一斉に口を開いた。


「何でも屋ラクス、開店!」

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