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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
25/56

第24話 新居完成

コンコン

 

 扉がノックされて給仕の人が入ってきた。

「姫様、アンベルをお持ちいたしました」

 トレ―の上に湯気をたてるカップが三つのっている。

「ありがとう」

 給仕の人は机の上にカップを並べると、一礼して部屋を出て行った。少し驚愕していたのはエルの服がいつもと違うからだろう。

「ふふ、驚いていたね」

 結衣が笑う。

「そうですね。こんな服はこちらにありませんから」

 

コンコン

 

 私達がアンベルに少し口をつけたところで再び扉がノックされた。

「失礼します。姫様、国王陛下がお戻りになりました」

「あら、随分と早いですね。分かりました。ありがとう」

 給仕の人は静かに一礼して出て行った。

「カイゼルさん、帰ってきたみたいだね」

「はい、思っていたよりも随分と早いです。丁度良いので、お父様の部屋でお店について話しますね」

 私達は飲みかけのアンベルを置いてカイゼルさんの部屋へ向かった。

 

「失礼します。お父様、麗奈達が戻ってきました」

 エルはノックをすると扉を開いた。

「おお! お二人とも戻ってこられましたか! さあどうぞ、おかけください」

 促されてソファに座る。カイゼルさんは向かい側に腰を下ろした。

「おや、エルその服は……」

「はい! 麗奈達からの御土産です」

「おお、そうでしたか。お二人ともありがとうございます」

「いえ、喜んでもらえて良かったです」

「それにしても戻ってこられて本当に良かった。お二人が居なくなってからエルはずっと寂しがっていたのです」

 そう言ってカイゼルさんは笑う。エルは少し顔を赤くする。

「ご心配をおかけして申し訳ございません。それなのですが、こちらと私達の世界とでは時間の進み方が違うようなのです」

「それは本当ですか!?」

 カイゼルさんが驚きの表情を浮かべる。

「お父様、麗奈達は向こうで一日しか経っていなかったらしいです」

「そうですか……随分と不思議な事もあるのですね……」

「あら、何の話ですか? まあ! お二人とも戻ってきていたのですね!」

 奥の扉が開いてセリアさんが入ってきた。

「お久しぶりです……で、良いのかな?」

 結衣がそう言って笑う。

「実は麗奈達の世界とこっちでは時間の進む速度が違うらしいのだ」

「まあ、そうなのですか! それはまた随分と……あら、エルその服は……うふふ、良く似合っていますよ」

「あ、ありがとうございます」

 エルが少し恥ずかしそうにする。

「それにしても不思議ですね……」

 

「そういえば、お店についてですが」

 話が一段落ついたところで、エルが口を開いた。

「ああ、そうそう! どうなったの?」

 結衣が身を少し乗り出す。

「はい! 遂に昨日完成しました!」

 エルが少し胸を張って言う。

「おお~!」

 私と結衣でパチパチと拍手をする。

「内装も素敵ですよ。そして丁度今日が引き渡しなのです」

「あ、そうなんだ。それじゃあもしかしてこれから行くの?」

 どんなお店になったのかとても楽しみだ。

「ええ、お昼過ぎに向かうと伝えてありますので、昼食をとったら行きましょう」

「楽しみだね~」

「これは急いで食べないとね」

「そんなに急がなくてもお店は逃げませんよ」

 セリアさんに笑われてしまった。

「それではすぐにでも昼食にしましょうか」

 カイゼルさんはそう言うと給仕の人を呼んで昼食の準備をするよう伝えた。

 

「それでは行きましょうか」

「お気をつけてくださいね」

「はい、行ってきます」

 昼食をあっという間に食べ終えた私達はカイゼルさんの部屋を後にした。

「エル、ウィッグを借りれるかな?」

「ああ、それなら馬車の中に用意させてあります」

「あ、そうなんだ。ありがとう」

「メルナとカレルも既に待っている筈です」

 

 私達が門の前まで行くと、メルナとカレルの二人がフェルディさんと一緒に待っていた。

「お待ちしておりました。おや姫様、素敵な服ですね」

「ええ、お二人から頂きました」

「そうでしたか。さあ、どうぞ。お乗りください」

 フェルディさんの手を借りて私達は馬車に乗る。扉が閉められ、馬車はゆっくりと動き出した。

「麗奈様、結衣様、おかえりなさいませ」

「ただいま。ごめんね、暫くの間居なくて」

「ふふ、お二人が居ない間とても寂しそうにしていたのですよ」

 そう言ってエルは笑う。

「ん、そう言えば戻って来てすぐに、誰かに泣き付くれた気がするけど……」

「そ、それは……」

 私の言葉にエルは顔を赤くして口ごもった。

「冗談だって。あ! そうだ」

「麗奈、どうかしたの?」

「ねえエル、私達が行く前にお願いしたことだけど、どう?」

「ああ、それについては丁度今日、お話ししようと思っていました。問題ありませんでしたよ」

「ほんとっ!」

「一体何の話ですか?」

 メルナとカレルが首を傾げる。

「二人にとってきっと良い話だよ。ね? 麗奈」

「うん、エルが協力してくれたからね」

「お二人には今夜夕食の時にお話しいたします。給仕長には伝えてありますので、お城へ帰ったら広間へ来てくださいね」

「畏まりました。それにしても私達にとって良い話って何だろう? カレル、分かる?」

「うーん、特に思い当たらないけど……」

「聞くまでのお楽しみだね」

「あ、そう言えば麗奈、お店の名前は決まっていますか? 完成したと言いましたが、看板だけまだなのです」

 そう言えばお店の名前は言っていなかった。

「ごめん、言い忘れてたよ」

「同じ名前にするの?」

「うん。えっと、お店の名前はラクスだよ」

「ラクス、ですね。着きましたら急いで作らせます」

「悪いけどお願いね」

 

  それから暫くすると馬車が止まった。フェルディさんが扉を開けてくれる。

「お疲れ様でした。さあどうぞ」

 私達が馬車から降りると、以前来た時は何も無かった場所に、家というよりは屋敷と呼ぶのがふさわしい石造りの建物があった

「お、大きいね~っ!」

 結衣は以前と同じことを言っている。

「それにしても凄いね……」

 屋敷の庭は様々な樹木と花が彩っている。メルナは既に目を輝かせていた。

「それでは中に入りましょう」

 そう言ってエルは入口を開けた。

「これは姫様。お待ちしておりました」

 中に居た男性が一礼した。 

「ええ、ご苦労様」

「姫様、看板の件ですが、いかがいたしましょうか」

「それですが、お店の名前が決まりました。出来る限り早い方が良いのですが、いつ頃完成しそうですか?」

「急いで作らせますので、明日の朝には取りつけられると思います」

「ありがとうございます。お店の名前はラクス……でしたよね?」

「うん、そうだよ」

「ラクスですね。直ちに作らせます」

「よろしくお願いします」

 男性は再び一礼するとお店を出ていった。

「エル、今の人は?」

「今回の工事を取り仕切ってくれた方です。お城の補修等にも携わっていただいている方で腕は一流ですよ」

「そうだったんだ。御礼言った方が良かったかな」

「また、明日の朝に会えますからその時にでも」

「うん、そうするよ」

 

「さあ、それでは中を見ていきましょう。今私達が居るのがお店のスペースです。床には大理石を使用させました。椅子等の家具は全て一流の職人に手掛けていただきました」

「なんていうか凄いね……」

 結衣が半分放心状態で聞いている。

 入って右側がお客さんの待つスペース。左側にはカウンターがあり、そこで依頼を聞くようになっている。ところどころに観葉植物が置いてあり、落ち着いた雰囲気のお店になっている。カウンターの奥は事務所と、カウンターの外からは見えないところに居住スペースへ続く扉と給湯室がある。

「思い浮かべていたよりも遥かに素敵なお店だね」

「そして思い浮かべていたよりもはるかに広いね……」

 放心状態から戻ってきた結衣はそう言って苦笑する。確かに想像よりも広く、カウンターには依頼を受ける椅子が十脚も並んでいる。

「麗奈と結衣のお店ですからね! さあ、次は居住スペースへと参りましょう。私達が入ってきたのはお店の入口で、居住スペースの入口はまた別にあります。折角ですから、そちらから入りましょう」

 私達はエルに続いて一度外へ出た後、先ほどとは違う扉から入った。中へ入ると赤い絨毯の敷かれたエントランスになっていた。二階へ上る階段もある。

「ここが居住スペースの玄関です。正面の扉は廊下へ、左の扉は応接室に繋がっています」

「もう驚かないよ」

 結衣は誰に言うでもなく独り言を言っている。

「ここが食堂です。奥が厨房になっていて、またその奥には食糧等を保管するための倉庫があります」

 廊下は食堂、リビング、プレイルーム、お店等へ繋がっていて、どの部屋もとても広い。

「それでは二階へ上がりしょう」

 

 廊下にもあった階段を上ると長い廊下があり、左右には部屋が並んでいた。いったいいくつの部屋があるのだろう。

「二階には皆様の部屋と浴室があります。そしてリビングや食堂もまたありますよ。説明は以上ですね。

 お二人ともいかがでしょうか。以前描いた図を基に作らせましたが……」

「凄い、の一言に尽きるね」

「うん、凄いとしか言えないよ」

「喜んでいただけた様でなによりです」

「ただ、一つだけ気になる事があるんだけど」

「何でしょうか?」

 エルが少し不安そうな表情を浮かべる。

「あまりにも広すぎて、掃除とかどうすればいいのか……メルナとカレルの二人だと限界もあるだろうし」

「それでしたら問題ありません。使用人を雇ってあります」

「あ、そうなんだ。それなら大丈夫なのかな」

「十五人程雇ってありますので心配ありませんよ」

「十五人も!? そんなに雇うとなるとお金が……」

「私が払いますので大丈夫ですよ」

「さすがにそれは悪いよ……」

 そこまでお世話になってばかりではいられない。

「それでしたら、お店が上手くいくまでは払わせていただきますので、それから先は麗奈達が雇ってください」

「そういうことなら……一刻も早く成功させるからね」

「ふふ、麗奈ならすぐですよ。さあ、せっかくですから、それぞれの部屋も見てください。階段の近くが皆様の部屋ですよ」

「此処は誰の部屋?」

「そこは麗奈の部屋ですね」

 私は早速扉を開ける。

「おおー! 凄い!」

 五十畳程はあると思う。モノクロでシンプルにまとめられた部屋で、家具も望んでいた通りの物が揃えられている。

「希望通りの部屋だよ。エル、ありがとう!」

「気に入っていただけたみたいで安心しました」

「こっちは結衣の部屋だね」

「はい。お二人の部屋は希望通りに行き来できるようになっています」

「えへへ、やったね。麗奈」

「うん、離れ離れは寂しいからね」

「離れ離れと言っても隣だけど」

「あはは……」

 結衣の部屋は白を基調としていて、なんていうのか、ふわふわした感じの部屋。

「それでは、次はメルナ達の部屋ですね」

「さて、メルナとカレルの部屋はどんな感じかな?」

 そう言いながら結衣がメルナの部屋の扉をあける。

「わぁ、可愛い部屋だね~」

 メルナの部屋は絨毯もカーテンもピンク色でとても可愛い。

「自分の部屋というのは初めてなので嬉しいです」

 メルナはとても嬉しそうに顔を輝かせている。

「カレルの部屋は……おーっ、落ち着いた部屋だね」

 カレルの部屋はシックにまとめられている。そして他の部屋よりも大きな本棚があった。

「それにしても大きな本棚だね~、一体何冊入るんだろう……」

「この本棚が本で一杯になったら嬉しいです」

「カレルなら本当にしそうだね」

 この前の書庫へ行った時のことを考えると本当にいっぱいになりそうな気がする。

「さて、一通り見ましたね。少し早いですがそろそろ戻りましょう。明日の引っ越しの準備もしないといけませんから」

「そうだ、引っ越しがあったんだ。すっかり忘れていたよ」

「お二人は荷物が少ないのであまり時間はかからないと思いますが」

「まあそうだけどね。それじゃあ行こうか」

 しっかりと鍵を閉めたのを確認して私達は馬車に乗った。

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