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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
22/56

第21話 下見

「お待ちしておりました。本日も護衛を務めさせていただきます。どうぞ、お乗りください」

 城門へ行くと既にフェルディさんが待っていた。メルナとカレルも行くからだろう。いつもより少し大きめの馬車に私達は乗り込んだ。

「実はこの馬車、使うのは今回が初めてなんですよ」

「あ、そうなんだ」

「はい、先月出来たばかりです。乗り心地もいつもより良いと思いますよ」

「それは楽しみだね」

 確かにいつもの馬車よりも中のクッションがふかふかしている。


 少しすると二人がやって来た。いつものエプロンドレスではなく白と紺の落ち着いたワンピースを着ている。

「お待たせして申し訳ございません」

「ううん、そんなに待っていないから大丈夫だよ」

「それでは動きますよ」

 二人が乗り込んだのを確認して、フェルディさんは馬車を走らせた。

「二人ともその服可愛いね」

「ありがとうございます」

「給仕長が用意してくれていました」

「そうなんだ。良く似合ってるよ」

 結衣の言葉に二人は顔を赤くする。

「あ、そういえば二人も魔法は使えるんだよね?」

 カイゼルさんが、魔法は誰でも使えると言っていた。

「あ、はい。私もカレルも魔法使いである皆様程ではありませんが、簡単な魔法は使えます」

「どんな魔法が使えるの?」

「小さな火をおこしたり、グラスに水を入れるくらいなら出来ます」

「水って、もしかして湧水の魔法?」

「そうです」

「どんな時に使うの?」

「そういえば、私も麗奈も訓練以外では戦闘でしか使ったことがないね」

「どんな時……えっと、のどが渇いたとき、でしょうか」

「お料理の時にも使いますよ。私とメルナが食べる料理なんかには湧水の魔法で出した水を使っています」

「あ、そっか~、普通に水がほしい時に使えばいいんだ」

「あれ? でも二人が食べる料理には、ということは私達の料理には使っていないの?」

 何か理由でもあるのだろうか。

「あ、それはおそらく私も食べるからだと思います」

「はい、その通りです」

「ん、エルが食べるから?」

「私は別に構わないのですが、古くからの慣習ですね。湧水の魔法によって出された水を、王家の者が食べる料理に使ってはならないとされているのです。単純に自然に湧き出た水の方が美味しいから、なのかもしれませんが」

「へえ~、そんなのがあるんだ」

「それにしても、火をおこしたり水を出せたりするなら料理も楽だね」

「結衣、私達も今度何か作ってみようか」

「ふふ、お二人の料理楽しみにしていますね」


 適当に雑談していると、馬車の揺れが止まった。どうやら着いたらしい。

「長い間お疲れさまでした。到着いたしました」

 フェルディさんが扉を開けてくれる。流石に長時間座っていたから疲れた。私達は馬車から下りて伸びをする。馬車は通りに面した空き地に止まっていた。通りには多くの人が行き交っている。

「う~んっ、ふぃ~。さすがに疲れたよ~。さて、それじゃあ早速お店を出す場所を見に行こうっ」

 結衣が通りに向けて歩きだす。

「ここですよ」

「へ?」

「ここがお二人のお店を出す場所です」

 結衣が歩き出そうとした体勢のまま硬直している。

「えーっと、私達が今居るここ?」

 私も思わず聞き返す。

「はい、そうです」

 私達が居るこの空き地はとても広い。分かりやすく言えばとてつもなく広い。

「随分と広いけど、どこからどの辺りまでなの?」

「その角から、あちらの角までです」

「それって、もしかしてこれ全部ってこと?」

「そうなりますね」

 結衣の質問にエルはサラッと言う。

「エル、これはいくらなんでも広すぎないかな?」

 サッカーフィールド位の大きさがある気がする。

「お、大きいね~っ!」

 結衣が思わず声をあげる。メルナとカレルの二人もあまりの広さに放心状態になっている。

「そんなことはありません。麗奈達がお店を出すのですよ。狭い位です」

「そ、そうかな? そんなことないと思うけど……」

 やっぱり私達とは感覚が違うのだろうか。

「あ、もしかしてお気に召しませんでしたか……?」

 エルがハッとした表情を浮かべてから、悲しそうな顔をする。

「そ、そんなことないよ。ただ、思っていたよりも広かったから驚いただけで。人通りも多いし、お店をするにはもってこいの場所じゃないかな」

「そうですか? それなら良いのですが。それでは、この付近を案内いたしますね」

「お願い」


 私達はエルに続いて通りを歩く。

「この通りを東に進めばすぐに居住区へ入ります。西へずっと歩いて行くと先日麗奈達といった通りに出ます」

「この辺りは飲食店が多いね」

 通りに面したテラスで多くの人が食事をしている。

「はい、飲食店や宿屋等が並んでいます。今回の場所も元はレストランと宿屋があったところですよ。他に、馬の乗り継ぎや荷物を預かってくれる施設もあります。麗奈達がお店を出す場所の向かい側にある建物がそうですね」

「うん、人通りが多くて雰囲気も良いし、お店を出すにはとても良い場所だね。ね、結衣」

「うん、私もそう思うよ」

「そう言っていただけると嬉しいです。頑張って探した甲斐がありました」

「二人はどうかな?」

 メルナとカレルを見る。

「驚きで言葉もありませんが、とっても素敵な場所だと思います」

「周りのお店を見ていたらお腹が空いてきました」

「うふふ。では、そろそろ戻りましょうか。今日中にどのようなお店にするか決める必要もありますから、あまり時間はありません」


 フェルディさんの待つ馬車へ戻った私達は、お城へ戻るまでの間、終始お店のことについて話していた。話しに夢中になりすぎて、フェルディさんが扉を開くまで着いたことに気付かなかった。

「それでは、メルナとカレルはお仕事が終わったら部屋まで来てくださいね」

「分かりました」

「失礼いたします」

「それじゃあ、私達も戻ろうか」

 門の前で、二人と別れて私達は部屋に戻った。そのままお風呂に入って、夕食を食べる。


コンコン


 食後、私達はアンベルを飲みつつ談笑していると、扉がノックされ、メルナとカレルの二人が入ってきた。

「失礼します」

「お待たせいたしました」

「お仕事はもう終わったの?」

「はい、全て終わりました」

「お疲れ様。二人も座って」

 メルナとカレルが私達の向かい側に座る。

「さて、それでは始めましょう。こちらの紙に書いたものを基にして設計していただきますので、皆さんの希望を含めて書いてください」

 エルが大きな紙を机の上に広げる。

「そういうのは結衣が得意だよ」

「それなら結衣、お願いできますか」

「うん、任せて。まずは大雑把な間取りからだね」

「あ、言っていませんでしたが二階建てです」

「それなら一階からだね。お店の場所をどこにするか、だけど」

「それはやっぱり正面じゃないかな」

「お店は正面ね。後は玄関とキッチンとそしてお手洗いに……」

 書こうとしたところで結衣の手が止まる。

「どうしたの? 結衣」

「いや~、文字が分からなくて」

「あ、そうか。それなら私が代わりに書くよ。リニアスのおかげだと思うけど、私は文字も書けるから」

「ごめん、よろしく」

「まかせて」

「間取りは私が書くから、説明とかをお願い」

 そう言って結衣が紙の上に線を引いていく。

「一階はとりあえずこんな感じかな。随分と空間が余ったけど……」

 紙の半分以上が白いまま残っている。

「それに関しては、設計の際に調整してもらいますので」

「それじゃあ、気にしなくていいのかな。と、なると次は二階だね。二階にはそれぞれの部屋と、後は何かな?」

「リビングも欲しいな」

「リビングは広めにして、当然お手洗いも――」

 結衣が書いていくのを見ているとそれぞれの部屋がとても広い。それでも余白がたくさんあるのだから本当に広いのだと実感する。

「よし、間取りはこんなところかな」

「後は内装ですね」

「それじゃあ結衣、交代するよ」

 ペンを受け取り、結衣が書いた間取りにキッチンやお店等それぞれの名称を書き入れていく。

「うーん、麗奈が書いている間に内装を決めておこうか。メルナとカレルは何か希望ある? 二人の家でもあるんだから、遠慮はいらないよ」

「私たちの家……ですか」

「うん、二人も家族だもん」

「麗奈と結衣の家族……私もなりたいです」

「エルは公務もあるだろうし、そうはいかないよ」

「それはそうですが……」

 私の言葉に寂しそうな顔をする。

「その代わりいつでも遊びに来てくれていいから。もちろん私たちも遊びに行くし」

「毎日でも行きます!」

「いや~、流石に毎日は厳しいんじゃないかな」

 そう言って結衣が苦笑する。

「うん、名前は書けたよ。それで、二人はどんな部屋が良いのかな?」

「えっと……ベッドとかカーテンはピンク色が良いです」

「私は……あ! 本棚が沢山欲しいです」

「結衣は何か希望ある?」

「私は白い大きなソファが欲しいな~」

「ふふ、結衣らしいですね」

「えへへ、そうかな」

「メルナがピンクを基調とした部屋で、カレルが本棚ね。そして結衣が白いソファで――よしっ」

「そういえば、麗奈の部屋はどうするの?」

「うーん、私の部屋は落ち着いた感じにしようかな。ああ、モノトーンにするよ」

 自分の部屋に説明を加える。

「それじゃあ後はお店だね。どんな感じにするの?」

「やっぱり落ち着いた雰囲気がいいな。ところどころに観葉植物を置いて、床は石で壁は木に――」

 お店になる予定の場所が文字で埋まっていく。

「よし、出来たっ」

 私は伸びをしてペンを置いた。

「お疲れ様です。では、明日にでも設計者の方にお渡ししておきます」

「うん、お願い」

「今から楽しみだね」

「そうだね、待ち遠しいよ」

「私もどういったお店になるのか楽しみです」

 そう言いながらエルは紙を巻いていく。

「お二人もありがとうございました。本来なら仕事の後でのんびりする時間なのに……」

「いえ、とても楽しかったです」

「十分のんびり出来ました」

 メルナとカレルは笑みを浮かべる。

「さて、それじゃあそろそろ寝ようか。随分と話しこんでしまったし」

 気がつかない間にかなりの時間が経っていた。

「では、私達は失礼いたします」

 メルナとカレルが席を立つ。

「二人とも、お休み」

「はい。お休みなさいませ」

 二人は頭を下げて部屋を出て行った。相当眠たかったのだろう。扉を閉める時に目を擦っているのが見えた。


「あ、そういえばエル」

 いつも通り服を脱いだ後、皆でベッドに入ってから私は尋ねた。

「何でしょう」

「お店はどれくらいで完成するのかな?」

「可能な限り急がせますが、二週間はかかると思います」

「えっ、二週間で出来るの!?」

 結衣がびっくりしている。私も驚いた。これだけの広さの建物が二週間で出来るなんて。

「はい、国を挙げて建てますので」

「いや、そこまでしてもらわなくてもいいけど……」

「そういうわけにはいきません。なにせ麗奈達のお店ですから」

 私は思わず苦笑する。

「二週間か……」

「どうかしたのですか?」

「うん、実は一度戻ろうかと思ってるの」

「あ、そうなの?」

「えっ!? 麗奈達、帰ってしまうのですか?」

「うん、暫く戻っていないし、持ってきたい物とかもあるから」

「確かに、ずっと帰って無いね~」

「だから、一度戻ろうかなって」

「そんな……寂しいです……」

 エルが少し涙を浮かべている。

「すぐに戻ってくるから大丈夫だよ」

「そうですか……。では、いつ頃戻られるのですか……?」

「カイゼルさんとセリアさんに言ってからの方がいいと思うから、明日の午前中かな」

「分かりました。必ず戻ってきてくださいね」

「もちろんだよ。お店も出来るんだから、それまでには戻ってくるよ。ね、結衣」

「うん。私もエルと会えないのは寂しいし」

「私も……お二人と会えないのは……寂しいです」

 そう言って泣いてしまったエルを私は抱きよせる。そのまま頭を撫でてあげていると、いつの間にか嗚咽が寝息に代わっていた。結衣も寝たのだろう。背中から寝息が聞こえる。私は二人の温もりに包まれながら瞼が落ちるのを感じた。

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