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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第一章
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第1話 未だ見ぬ父よりプレゼント

「っうーん」

 

 ジリリリリ

 

 目覚まし時計の鳴る五秒前、私は目が覚めた。いつからだろう、目覚まし時計より少し早く起きるようになったのは。年に数回は目覚ましに起こされるけど、その時はなんだか負けた気がして少し悔しい。

 ベッドの上で軽く伸びをして、ふと横を見る。

「誰!? あれ、あなたは……」

 ベッドの横で私を見下ろすように男性が一人立っていた。最近少し気になっていた人、学校でいつも私の方を見ていた黒のスーツに身を包んだ男性だ。特に危害を加えてくる様子はない。

「どうしてあなたがここに?」

 何とか気持ちを落ち着けて私は男性に尋ねた。

「貴女様、いえ麗奈様は高校生になられました」

「……え?」

 男性は私の質問に対しておもむろに話し始めた。それにしても何を言っているのだろう。私が高校生になったことがどうしたというのか。私は無意識のうちに怪訝な表情を浮かべていたようで、男性はあわてて付け足した。

「私はクロノス様、麗奈様のお父上の命によって参りました」

 

 バサッ!

「貴女は私のお父さんの事を知っているのっ!?」

 私は思わずベッドから身を乗り出した。身を乗り出さずにはいられない。私はお父さんの事を何も知らない。物心ついたときには既にいなかった。お母さんに聞いても何も教えてくれなかった。いずれ話してくれると言っていたが、そのお母さんも一昨年に交通事故で他界してしまい、結局お父さんについて聞くことはできなかった。

 そのお父さんに言われてここへ来たのだと、目の前の男性は言った。

 私は気付けば男性の肩を掴んでしまっていたようで、男性は戸惑っていた。私は慌てて手を離す。

「ご、ごめんなさい……えっと、私のお父さんに言われて来たんだよね」

「はい。時の神である麗奈様のお父上、クロノス様の命を受けてまいりました」

「え?」

 私の聞き間違いでなければ、今この男性は神と言った。それも、私のお父さんの事を。私はさぞ間の抜けた顔をしているだろう。しかし、そんなことを意に介せず男性は続ける。

「これからお話しすることは全て事実です。どうか最後までお聞きください」

 男性の表情は真面目そのもの。ふざけている様子は全くない。

「分かった」

「先ほど申し上げました通り、麗奈様のお父上は時を司る神、クロノス様です。さほど有名ではございませんが、こちらの世界でもギリシア神話に記されております。私が今回麗奈様の前に現れたのは、クロノス様からお預かりした神能をお渡しするためです。麗奈様が高校生になられたときにお渡しするよう仰せつかっておりました」

「神能、それは一体……」

「今から私の言う言葉を復唱してください。麗奈様の好きな場所を思い浮かべながら」

「復唱ね。分かった」

「TO TIME OF THE PAST」

『TO TIME OF THE PAST』

「LEAD ME」

『LEAD ME』

 

 男性の言葉を間違えないよう復唱する。最後の言葉を発した瞬間、視界が真っ暗になる。

 

 

 視界が開けて、次に私の目に入ったのは結衣の部屋だった。復唱しながら思い浮かべていた私の好きな場所、これまで何度も見たピンクを基調としたぬいぐるみのたくさんある部屋。間違いなく結衣の部屋だ。豆電球の明かりの中、結衣が規則正しい寝息を立てている。非常に可愛い。

 

「これは一体……」

「麗奈様、これが神能です。麗奈様は時間と場所を移動されたのです」

「時間を!?」

「はい。今は麗奈様が先ほどおられた時間の五時間前あたります」

 先ほどまで居た自分の部屋から結衣の部屋へ移動しただけでも信じられないくらいなのに、時間まで移動するなんて……。

「すごいっ、すごいよっ!」

「ん~っ、むにゃ……」

 結衣が寝返りを打つ。ここが結衣の部屋だということを忘れていた。私は声をひそめる。

「どこでも好きなところに行けるの?」

「はい。今回は私の方で時間を決めさせていただきましたが、麗奈様の好きな時間へ、過去へも未来へも行くことができます」

「信じられない、夢みたい……」

「夢ではございませんよ。今後この神能をどのように使われるも麗奈様の自由です。クロノス様は『可愛い娘へ高校の入学祝いだ』と仰っておりました」

「お父さん……」

 私は心の中でお父さんへ感謝の言葉を伝えた。きっと聞こえているはず。

 

「さて、そろそろ戻りましょう」

「戻るときはどうすればいいの?」

「戻りたいという思いを込めて『RETURN』と言ってください」

「ん、分かった」

『RETURN』

 

 

「やっぱり凄い……」

 私達は部屋へと戻ってきた。外も明るい。

「それでは、私は役目を果たしましたので、これで失礼させていただきます」

 そう言って男性は頭を下げた。

「待って」

「どうされましたか?」

「貴方の名前を教えて」

「これは大変失礼いたしました。私はクロノス様の使い魔でエルクと申します」

「エルクさんだね。良かったらお父さんによろしく伝えておいてくれないかな」

「畏まりました。必ずお伝えいたします」

「ありがとう」

 そうしてエルクさんが何言か囁くと身体が徐々に消えていく。

「またお会いすることもあるでしょう。その時はゆっくりとお話したいものです」

「お父さんの話聞かせてね」

「はい。それではまたいつか」

 そう言ってエルクさんの姿は完全に消えた。

 

 〈言い忘れておりました〉

「わっ」

 消えたはずのエルクさんの声が聞こえる。私は思わず声をあげてしまった。

 〈驚かせてしまい申し訳ございません。お伝えし忘れたことがございます。先ほど麗奈様が詠唱された呪文は過去へ行くためのものです。未来へ行く際は『TO TIME OF FUTURITY LEAD ME』場所のみで時間を移動されない場合は『NOW TRANSFER』と詠唱してください〉

「分かった」

 〈また、この神能は時間と場所を移動する他に、麗奈様のおられる世界と並行して存在する無数の世界へと移動することができます〉

「そんなことができるの?」

 〈はい。ただ、他の世界へと移動するためには、移動する先の世界に関わる物が必要となります。そういった異世界に関わるものは、今の麗奈様が見れば一目でわかるはずです。お伝えし忘れたことは以上です。それでは今度こそ失礼いたします〉

 それからエルクさんの声は聞こえなくなった。

 

 その後、何度か家の中を神能を使って移動してみた。先ほどまではいまいち実感がわいていなかったけど、こうして使ってみると改めて凄いと思う。まさか高校生になって、こんなサプライズがあるなんて思ってもいなかったな。

 ふと時計を見ると、そろそろ準備をしないと学校に間に合わない。私は急いで準備を済ませる。

 

 ピンポーン

 

 七時半。いつも通りに結衣が迎えに来てくれる。

「おはよう、麗奈」

「おはよう~」

 挨拶を交わしてから、二人並んで歩き始める。

「ん? 何か良いことでもあったの? 楽しそうな顔をしているけど」

「実はね、結衣に凄いものを見せてあげようと思って」

「なになに?」

「よく見ててね」

『NOW TRANSFER』


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