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剣と魔法と何でも屋  作者: リース
第二章 リフィレス王国編
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第10話 リニアス

「今からそうですね……千年程前のことです。世界を巻き込んだ大きな戦争が起こりました。この世界はセルトリア大陸とアウトラ大陸という大きな二つの大陸からなります。セルトリア大陸を囲むようにして環状にアウトラ大陸があり、戦争はその大陸の間で起こりました。

 セルトリア大陸は温暖な気候に加え、四方を海に囲まれていることから雨が多く降り、海産物も豊富です。また、大陸中央に連なるガレウム山脈からは様々な鉱石が採れます。アウトラ大陸にある四つの国々はこの恵まれた土地を求めて、同盟を結びセルトリア大陸の西の端、此処リフィレス王国に攻め込んできたのです。

 海という防壁のおかげで暫くは守ることが出来ましたが一国と四国、戦力の差は明らかです。時間が経つにつれ押し込まれていきました」

「待って下さい。一国と四国というのはどういうことですか? セルトリア大陸の他の国は何もしなかったのですか?」

 戦争となれば他の国々にも影響は出るはず。それなのに見捨てるだなんて。私は咄嗟に尋ねていた。

「そうです。アウトラ大陸の国々は、戦争に一切巻き込まないことを条件にセルトリア大陸の他の国と不戦協定を結んでいたのです。出来るなら戦争を避けたいというのは何処の国も同じ、仕方のないことです。

 さて、そうして押されつつも何とか守ってきたのですが、それも限界、あと数日で上陸されるという時です。当時のリフィレス王は降伏を考えていました。降伏したところで王家は助かりませんが、民のことを考えるとそれしかなかったのです。

 しかし、そこにリニアスという一人の少女が現れました。リニアスの魔力は強大で、また、他の者には使えない特殊な魔法を使うことが出来ました。リニアスは一人で海に出ると一瞬にしてアウトラ大陸の軍を壊滅させたのです。

 こうして、リフィレス王国は一人の少女によって救われ、人々はリニアスを英雄と讃え、女神として崇めました。しかしながら、暫くするとリニアスを恐怖の対象と見る者が出てきたのです。そして遂にはリニアスを崇める者と恐れる者との間で戦争が起こりました。戦争を終わらせたリニアスが戦争の対象となったのです。

 リニアスは争いの種となる事に耐えられませんでした。そして自らを封印することに決めたのです。リニアスはリフィレス王に、封印を解くものが現れた時その者を手厚く遇するよう伝えて、自らを石板に封印しました。

 国を守った者に最後まで何もすることが出来なかったことを悔やみ、リフィレス王は感謝と償いの意味を込めて神殿を作らせ、リニアスを祀りました。その神殿がクルス神殿で、麗奈達の現れた場所です」

 

「……と、いうことは」

「それじゃあ、私は……」

「リニアスの封印を解いた者。それが麗奈、貴女です。髪の色は魔力の資質を表すもの、穏やかな光を放つ銀の髪は正しく、文献に記されたリニアスのそれです。封印を解いたことで麗奈の魔法の資質がリニアスと同じになったのでしょう」

「なるほど……髪の色が変わった理由は分かりました。しかし、どうして私が封印を解くことが出来たのでしょうか」

 単なる偶然なのだろうか。

「そうだよね、私は文字が読めなかったし、どうして麗奈は読めたんだろう」

「それはおそらく、麗奈の持っている玉が原因でしょう」

「この玉ですか?」

「お待たせしました」

 私が白く光る玉をポケットから取り出すと、そこにジェイルさんが戻ってきた。

「おお、ちょうど良いところに。麗奈、その玉をはめてみてください」

 ジェイルさんが持ってきたブローチの様な物を受け取り、そこへ白く光る玉をはめる。

「それが本来の輝きです」

 はめた途端、玉の輝きがそれまでとは比べ物にならない程強くなった。

「ふわ~……」

「凄い……」

 私と結衣は思わず声を漏らす。

「その玉はリニアスの景玉といい、そうしてはめ込まれた形で、生前リニアスが常に身に着けていた物とされています。リニアスが自らを封印した際、玉だけが何処かへと消え、その土台だけが残されたのです」

「では、私がこの景玉を持っていたから封印が解けたのですね」

「はい、おそらくそうでしょう。……いえ、もしかすると逆かもしれません。文献によると封印を解く鍵はその者の本質とされています。ですから、景玉によって封印を解くことが出来たのではなく、封印を解ける麗奈が景玉を持っていた。と、いうだけではないでしょうか。ただ、決して偶然ではないと思います。これまで何人もの人間が強大な力を求めて封印を解こうとしました。しかし、誰一人としてそれは出来ませんでした。そうした中、突然現れ、封印を解くことが出来た麗奈が景玉を持っていたことは必然なのかもしれません。景玉は麗奈に差し上げます。大切にしてください」

「いえ、このような物を頂くわけにはいきません。お返ししたします」

 私は光を増した景玉を差し出す。

「そういうわけにはまいりません。その景玉を机の上においてみてください」

 私は言われた通り景玉を置く。

「あっ」

「光が……」

 私が手を離すと景玉はその光を弱めた。

「先ほど申し上げた通り、その景玉はリニアスが身に着けていた物。また所持者の魔力によってその力は保たれています。ですから、それのあるべき場所は麗奈、貴女なのです」

「そういうことでしたら……ありがたく頂きます」

 私が胸に着けると景玉は再び光を強めた。

「そうしてください。それにその景玉には持ち主を守る力があります」

「持ち主を守る力、ですか?」

「はい。そうですね……フェルディ、こっちへ」

 呼ばれたフェルディさんがカイゼルさんのもとへ行くと、カイゼルさんは何言か耳もとへ囁いた。フェルディさんが一礼してから部屋を出る。暫くすると先ほどまでの鎧の上にマントのようなものを羽織ってフェルディさんが戻ってきた。

「失礼」

 部屋に入るなり私のもとへ歩いてきたフェルディさんは、そう言うと突然剣を抜いた。

「えっ」

 カイゼルさんとジェイルさん以外の人は皆目を見開く。フェルディさんは大きく振りかぶり、そのまま私へ剣を振りおろした。

「麗奈っ!」

 結衣が叫ぶ。私も思わず目を瞑り、これから来るであろう衝撃と痛みに覚悟する。

「あれ?」

 

 ガシャン!

 

 突然大きな音がした。私の身体に異常はない。私が目を開けるとフェルディさんが数メートル離れた先に倒れていた。

「これは一体……」

「麗奈、何かしたの……?」

「ううん、私も何が起こったのかさっぱり」

「それが景玉の力です。斬りかかろうとしたフェルディを景玉が弾き飛ばしたのです。フェルディには魔防衣を着せていましたから、弾き飛ばされただけでダメージはありません。ご安心を」

 カイゼルさんがそう言うとフェルディさんは起き上った。特にダメージを受けた様子もない。

「怖いものですね……」

「いえ、危害を加えようとでもしない限り何も起こりません。麗奈を守ってくれる心強い味方ですよ。結衣、麗奈の景玉に触れてみてください」

「は、はい」

 結衣が恐る恐る手を伸ばし、景玉へと触れる。――刹那、何も起きなかった。結衣は胸をなで下ろしている。

「良かった……」

「そういうわけですので、是非とも身に着けて居てください」

「はい、ありがとうございます。ところで、私達のことなのですが、髪の色が変わった理由も、こうしてもてなしていただける理由も分かりました。しかし、どうすればいいのでしょう。私達が出来ることなんて何もありません」

「ははは、何もしていただく必要はありません。部屋を用意させますからご自由にお過ごしください」

「さすがにそれでは申し訳ありません。何か私達に出来ることはありませんか」

「そうですね……それではエルの友達になってやってください。この城には同じような歳の者がおらず、また身分のせいもあって、同年代の友人がおらず、エルには寂しい思いをさせているのです」

「そんなことでしたら、お安いご用です。ね? 結衣」

「うん、もちろんだよ。エルティシアよろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

 結衣が手を差し出すとエルティシアは恥ずかしそうにしながらも笑顔で握手した。カイゼルさんもセリアさんも嬉しそうに笑っている。

「さて、随分と話しこんでしまいました。魔法についてはまだ話していませんが、それは明日にしましょう。部屋の用意は出来ておりますので、どうぞゆっくりとしてください」

「ありがとうございます」

「あ、そうだ。ねえ麗奈、折角だしエルティシアも一緒にどうかな?」

「良いんじゃないかな? エルティシア、どうかな? 良かったら今夜一緒に寝ない?」

「えっと……」

 エルティシアは少し悩んでセリアさんの顔を見る。

「ふふ、良かったわね。行ってらっしゃい」

 セリアさんはそう言って微笑んだ。

「それじゃあお邪魔します」

 エルティシアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

「ご案内いたします」

 話がまとまったところで給仕の方が歩いてきた。

「それでは、また明日の朝にこの部屋で。ごゆっくりお休みください」

「はい。お休みなさい」

 私達はカイゼルさんとセリアさんに挨拶をしてから部屋を出た。給仕の方に続いて歩いていく。

 

「こちらでございます」

 そう言って開かれた扉の中は当然のようにとても広かった。おそらく五十畳はあるだろう。

「荷物はあちらに置かせていただきました。また、何かございましたらいつでもお申し付けください」

 給仕の方はそう言って部屋を出て行った。

「それにしても綺麗な部屋だね~」

 早速ソファに座った結衣が部屋を見渡して言った。

「ここは、お城の中でも特に趣向を凝らした部屋なんですよ」

 そう言ってエルも椅子に腰かける。

「ねえエルティシア、この部屋にお風呂はあるの?」

「ありますよ。あの扉です」

 そう言ってエルティシアは部屋の端にある扉を指さす。

「それじゃあ早速皆で入ろうよ」

「うん、いいね。そうしよう」

「皆で、ですか? 恥ずかしいです……」

「皆同じ女性なんだから気にしない気にしない」

 私と結衣は早速タオルを持ってお風呂へ向かう。

「お二人とも着替えは持たないのですか?」

「ああ、私も結衣も寝るときは何も着ないから」

「何も……ですか……」

 エルティシアは顔を真っ赤にしている。

「さあ、早く入ろう」

「あ、はい」

 脱衣所もやはり広かった。私と結衣は手際よく服を脱いでいく。

「ああ、先に入っていてください。少しかかりますので」

 エルティシアはドレスを着ているので脱ぐのに時間がかかっている。

「それじゃあ悪いけど先に入るね」

 浴室の扉を開けると言うまでも無く広かった。お風呂は大理石で出来ており、ところどころに彫刻が置かれてある。

「麗奈、これってもしかして香水風呂じゃない?」

「そういえばそうかも、一度入ってみたかったから嬉しいな」

 浴槽には透き通った桃色のいい香りのするお湯が入っている。私と結衣は身体を流してから浸かった。

「やっぱりお風呂は良いね~」

 結衣が幸せそうな顔を浮かべている。私と結衣が香水風呂を満喫していると、タオルで体を隠しながらエルが入ってきた。

「綺麗だね~」

 結衣はエルティシアの体に見惚れている。エルティシアの肌は珠のように白くきめ細かい。

「そんなに見ないでください。恥ずかしいです」

「ごめん、あまりに綺麗だったから。それにしてもスタイルも凄くいいよね。麗奈にも負けてないんじゃないかな。麗奈とエルティシアと一緒に居ると私が恥ずかしいよ」

「結衣も凄く綺麗ですよ」

 エルティシアもそう言いながら入ってくる。

 それからゆっくり雑談しながらお風呂に入っていると、最初は恥ずかしそうにしていたエルが、途中からは慣れてきたみたいで普通に話せるようになっていた。

「ねえエルティシア――」

「あの……」

 私が話しかけようとするとエルティシアが口を開いた。

「ん、どうしたの?」

「私のことですが、その……どうぞエルと呼んでください」

「えっと、それじゃあエル」

「はい」

「さっきカイゼルさんはああ言っていたけど、私たちって本当に何もしなくていいのかな?」

「ええ、お父様が仰っていた通りのんびりと過ごしてください」

「うーん……」

「まあ麗奈明日になってから何をするか考えようよ」

「……うん! そうだね」

 

 その後も少し雑談し、気がつけば一時間ほど経っていた。のぼせる前にお風呂からあがる。

「あの……お二人はその……服は着ないのですか?」

 私と結衣が服を着ないのを見てエルが尋ねる。

「うん。私たち、寝るときは何も着ないから。ね、麗奈」

「うん。あ、そうだ。今日はエルも一緒に寝るんだから、エルも服は着たらだめだよ」

「えっ、私もですか!?」

 私の提案にエルが驚いている。

「そっ、大丈夫だよ慣れてしまえば気にならないから」

「わ、わかりました……」

「さて、それじゃあ寝ようか。今日は色々とあったから、もう眠いよ」

 私たちは三人ならんでベッドに入る。

「これはやっぱり恥ずかしいです」

 エルはの顔はずっと赤いままだ。

「すぐに慣れるよ」

 

 少しすると結衣の寝息が聞こえてきた。エルも眠そうにしている。

「これからよろしくね」

 寝てしまったみたいで返事は返ってこない。

「ん、寝ちゃったか。お休み」

 私も目を閉じると、すぐに意識を手放した。

 

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