同じ声ではない
アンリは傷害事件の被害者が覚えている声を慎重に比較した。録音を聞かせる手続きには限界があり、本人の記憶を汚す危険もある。捜査官は音響の専門家に相談し、何を確認できるのか先に聞いた。
被害者は女性の静かな声を覚えていた。だがクレールの古い留守番電話の声を聞いても、同じかどうか判断できないと言った。
「似ている気がする。でも、違うかもしれない」
アンリはその言葉をそのまま書いた。
午後、署の若い巡査が結婚すると報告した。仲間たちは小さな菓子を持ち寄り、勤務の合間に祝った。アンリも笑ったが、机へ戻ると被害者の怯えた顔を思い出した。
マチューとの電話で、彼は証言だけでクレールを追い込めないと伝えた。疑うことと証明することの間には、誰かの生活がある。
失踪した役員については、家族から早急な捜索を求める連絡が入った。アンリは現地署と調整し、最後の通話先や日頃の散歩道を確認した。男は持病の薬を必要としているという。傷害事件との関連を疑う前に、生命を守るために急ぐべき捜索だった。マチューも必要な資料を送ったが、クレールの居場所を示すものは一つもなかった。捜索の連絡を終えて外へ出ると、県都の広場では休日の市が始まっていた。子どもたちが手をつないで歩き、人々は食事の準備をしている。アンリはその人混みを眺め、行方不明者がどこかで助けを求めているかもしれないと考えた。
その夜、県境から新しい通報が届いた。古い輸送業者の元役員が自宅に戻らないという。まず行方不明者として扱われ、家族への聞き取りが始まった。




