図面の余白
エロディは封鎖された書庫の古い配線図を手に入れた。図面の余白には、倉庫を増築した際に担当した技師の署名がある。現在の施設長が生まれる前の工事で、資料を探すだけでも時間がかかった。
退職した技師は近くの村で暮らしていた。連絡を取ると、配線は予備の警報装置に使うはずだったが結局設置されなかった、と説明した。
「そのまま残したんですか」
「外す予算がありませんでした」
なんともありふれた理由だった。エロディは調査簿に記入したが、封印された箱の由来はなお分からない。
午後、施設の受付では搬出予定の資料が到着せず、利用者から苦情が出た。新人は気落ちしたが、エロディは状況を説明する手紙を一緒に書いた。
帰宅の列車で、彼女は窓に映る自分の顔を見た。古い印も配線も、秘密を示しているとは限らない。それでも誰が何を預けたのか分からない箱は、管理する者には重かった。
見つかった受領書は、新旧二つの書式が重なった複写だった。紙の中央には箱の重量が記されているが、保管物の名称は抜けている。エロディは以前の計量台がどこへ移ったか確認した。計量台は故障して処分され、記録を実測で確かめる方法はもうない。施設長は、箱を開けることと記録を直すことを別々に扱うよう命じた。彼女はこの方針に安堵した。目の前の不確かさを早く消したい気持ちはあったが、一度破った封印は元に戻らない。翌週には新しい搬入物も来る。古い箱だけのために施設が存在しているわけではない。 誰かの判断を急がせるために、資料を開けるわけではなかった。
翌朝、監査担当からその箱の受領書が見つかったと連絡が入った。




