寄付者の肖像
首都の会館で古い絵を修復していた職人は、額縁の裏に小さな紙片を見つけた。寄付者の名と納品年が書かれている。会館の管理人は記録を取るよう頼み、絵を壁へ戻すかどうかを理事会に諮ると言った。
寄付者はラ・ヴェーヌ信託の初期理事の一人だった。肖像の人物に似た顔が屋敷の古い写真にもあるというが、職人には判別できない。絵は似せるために描かれるとは限らなかった。
会館では翌週の福祉行事の準備が進んでいる。子どもたちに使わせる広間を掃除し、机の角を保護布で包んだ。管理人は行事を中止するわけにはいかないと繰り返した。
夕方、書記が紙片の年代を調べるため写真を撮った。記録にない寄付であれば、資産台帳も改めなければならない。
修復職人は絵を運び、壁に残った四角い日焼け跡を見た。誰かが長くそこに掛けていた物を外せば、明るい色の輪郭だけが残る。
修復職人は絵の裏に貼られた古い布を調べるうち、額縁だけが後から交換されたと気づいた。肖像と寄付者の名は同じ時代のものではないかもしれない。書記は会館の資産台帳に修復の経緯を加え、職人の意見を記録した。議長は肖像を目立たない部屋へ戻すよう頼んだが、理由を問われると来客の導線を変えたいだけだと説明した。福祉行事の前日、子どもたちが飾り付けを手伝った。誰かの名を消すためではなく、舞台の広さを確保するために絵は外された。職人は壁の傷を直し、絵に掛ける布を新調した。肖像の視線を恐れていたのは、もしかすると絵を見る大人だけだった。
その跡を消すかどうかは、職人の判断ではなかった。




