湖畔の療養所
湖畔の小さな療養所で、検査技師シモンは古い診療記録の保存先を聞いた。施設はかつてラ・ヴェーヌ信託から設備の寄付を受けている。院長はその事実を隠さなかったが、当時の事情を知る職員はほとんど退職していた。
「寄付は今も続いていますか」
「いいえ。ただ修繕費を請求する窓口だけが残っています」
院長は若い患者の診察へ戻り、事務員が請求書の写しを出した。そこには共同保全の印があったが、医療資料の移送を示すものではない。建物の設備を守る契約にも同じ印が使われていたという。
シモンは落胆を隠さず、それでも複写の許可を求めた。間違った結びつきを一つ外すことも仕事だ。
夕方、院長は湖を見下ろす窓際に立ち、ここが閉鎖されれば患者は遠くの病院へ通うことになると話した。信託の名を聞けば不安を抱く職員もいるが、寄付で助かった命もあった。
院長は療養所の倉庫から、寄付された機械の説明書を持ってきた。何度も修理されており、最初の製造番号は読めなくなっていた。シモンは試料の番号との照合が無意味だと判断したが、契約の署名には見慣れた共同保全の印がある。機械も医療資料も似た経路を通っているだけなのか、それとも一つの業務に集められていたのか。答えは出ない。病室では若い看護師が患者に車椅子の扱い方を教えていた。院長は今日の予算で明日の車椅子を買えるか考え、シモンは今日預かった紙を明日も確認できるようにすることを考えていた。互いに仕事は違うが、残しておくべきものがあった。
シモンはその言葉をノートへ残し、帰りのバスを待った。




