採用されない名簿
首都の会館では、ラ・ヴェーヌ信託の新たな監査役を選ぶ会議が行われた。候補者は三人。どの人物も財務や公益事業の経験があり、推薦書も揃っている。ただし古い規約では、候補者全員に名誉職の承認が必要だった。
書記は空席のままの名誉職欄を指した。議長は長く続いてきた手続きだと説明したが、承認者の氏名を言わない。
「存在しない署名を求めるわけにはいきません」若い監査役候補が言った。
会場には重い沈黙が落ちた。会議の参加者はみな同じ立場ではない。職員の給与を守りたい者、規約を改めたい者、古い資産を動かしたくない者がいる。
議長は採決を延期した。反対の声も上がったが、規約違反を重ねるよりはましだという意見が通った。
廊下で清掃係が椅子を戻していた。議論の内容など知らず、翌朝も別の会議があるとだけ聞かされている。
候補者の一人は、自分の名前が名簿から突然消えた理由を尋ねた。書記は手続きが延期されたためと説明したが、推薦者の欄まで削除されたことは知らなかった。調べると会議用の一覧と正式な理事会資料が異なる版になっている。書記は配布した版を回収せず、両方を保存した。後から書き換えがあれば分かるようにするためだ。議長は昔から同じように処理してきたと言った。しかし若い候補者は、公益事業を扱う席だからこそ記録の正確さが必要だと返した。会館の職員は、誰が勝っても来月の事業を続けなければならない。会議室の外では食材を運ぶ台車が通った。
書記は承認欄を空白のまま保存した。誰の名を書くべきなのか、前任者に尋ねる必要が生じた。




