帰ってこない封筒
ジュリアンは仕事帰りに郵便局へ寄った。クレールへ送った手紙が、宛先不明で戻ってきたからだ。最後に届いた消印の町へ送ったものだが、宿屋の住所を正しく書いたはずだった。
局員は保管期限が過ぎたと説明した。宿に誰かが滞在した事実と、そこへ私信が届くことは別だという。ジュリアンは局員を責めず、返ってきた封筒を持ち帰った。
家ではローズが台所の窓を拭いていた。頼んだわけではない。雨漏りの痕が気になったという。二人で修理業者の番号を探し、古い手帳から一件を見つけた。
「返事が来なくても、送ったことは消えないわ」
ローズは封筒を見て言った。ジュリアンはうなずいたが、慰めになったかは分からなかった。
夜、彼は手紙の封を切らずに引き出しへしまった。書いた内容は覚えている。働いていること、ルカの墓の花が咲いたこと、家の鍵を替えていないこと。それだけだった。
修理業者はジュリアンに、窓枠の腐食が進んでいると説明した。安く直す方法もあるが、次の冬にはまた雨が入るかもしれない。彼は貯金を計算し、長く使える修理を選んだ。ローズは古い食器を運び出しながら、ここへルカの小さな椅子を置くつもりだったのよねと言った。ジュリアンは覚えていた。椅子の話をした日、クレールは笑って大きすぎる食卓を指さしたのだ。工事が始まると部屋には木の香りが広がった。誰かが帰ってくるための修理かと問われても、彼には答えられない。家に住む人が一人でも、雨漏りする窓を放っておく理由にはならなかった。
窓の外で郵便配達の車が角を曲がった。誰かに届かなかった言葉が、町を一周して戻ってきた。




