証言の値段
ナディアのもとへ、屋敷の出入りを知っているという男が訪れた。話をする代わりに報酬を求め、首都の著名人の名をいくつも口にした。証拠はない。男は焦れたように机を叩いた。
「これだけの話を無料で渡すと思いますか」
「私は確認できることしか載せません」
ナディアは面談を終え、来客の時刻を記録した。編集長は大きな記事になるかもしれないと期待したが、彼女は男の説明の日時に食い違いがあると伝えた。
午後、町の学校で開かれた絵の展示会を取材した。子どもたちが描いた橋は、実際よりずっと鮮やかな色だった。教師は崩れかけた橋の補修を訴えるため、この題材を選んだという。
夜、ナディアは男が残した写真の裏面を確認した。印刷日が撮影日より何年も後になっている。複写かもしれないが、説明を省いて記事にはできない。
写真に写る屋敷の門は、ナディアが先月見たものと同じだった。だが建物の壁は改修前の色で、庭木も短い。男が最近撮影したと言い張った点だけは明らかに怪しい。新聞社の写真担当は、印画紙に残る店名から現像場所を調べられるかもしれないと教えた。ナディアは元の持ち主に尋ねるため連絡を試みたが、渡された番号はつながらなかった。彼女はその事実をノートへ書き、翌日の町議会取材の資料を開いた。記者が追うのは不都合な秘密だけではない。誰に払われた予算が、どこの橋の修理に使われたのか。それもまた公にすべき仕事だった。
彼女は警察へ連絡し、金銭を要求された事実だけを伝えた。記事にしなかった情報が、事件を解くとは限らない。しかし嘘を広めないという判断は、その日の仕事として残った。




