病院の食堂
シモンは首都へ出張し、共同保管施設の技術担当と面会した。移送された検査試料が正しい温度で保存されたか確かめるためで、疑惑の解明だけを目的にした旅ではなかった。施設側は一般的な保存方法を説明し、個別の試料については正式な許可を待つよう求めた。
昼には病院の食堂で、別の検査技師と食事を取った。技師は人員不足の悩みを話し、夜勤で使う冷蔵庫の故障が続いていると嘆いた。シモンもヴァルノワの改装工事について話した。
話が途切れた頃、相手が口を開いた。
「古い一時保全物だけ、管理台帳が別になっているのは知っていますか」
それは規則違反ではないという。以前の委託先が別だったため、番号の管理だけが残ったらしい。
シモンは教えられた資料の閲覧先を控えた。本人に権限のない文書を見せてもらうつもりはなかった。
出張先の技師は、古い保存契約の一部が現在の医療法制に合っていない可能性を指摘した。しかし、それが直ちに不正を意味するわけではない。契約を結んだ当時には別の制度があった。シモンは患者の匿名化がどこまで守られていたかを確認し、問題があれば病院の倫理担当へ報告すると約束した。夕暮れの列車には、遠くの町から帰る高校生の集団が乗っていた。彼らは試験の話をして笑い、窓に曇った息で文字を書いた。シモンは鞄の中の資料を閉じた。ルカの試料を扱うことには、まだ名を知らない多くの患者の情報を守る責任も伴っていた。
帰りの列車では、窓の外を畑が流れていった。出張の領収書を整理すると、病院で受け取った説明書に小さな注記があるのを見つけた。「旧契約分の保全責任は信託先に帰属」。責任の所在を確認するため、彼は翌朝の照会を考えた。




