遺された会報
市立図書館の司書ミレイユは、寄贈された古い会報の綴じ目が切れているのに気づいた。ページが抜けたのではなく、後から別の版へ差し替えられた形跡だった。学校からの見学予約が重なり、詳しく調べるのは閉館後になった。
同じ会報を県の記録室でも所蔵していたので、ミレイユは番号を照会した。返信された表紙写真には、現在の本から消えている副題があった。「ラ・ヴェーヌ保存事業」と小さく印刷されている。
数十年前、山の診療所へ医療機器を寄付した団体だと年表には書かれていた。現在の屋敷の所有者につながるかどうかは分からない。
「こんな紙を誰が見るんでしょうね」学生の助手が言った。
「今、あなたが見ているわ」
二人は笑い、破れた背表紙を保護紙で包んだ。夕方になると子どもたちが図鑑を返しに来た。司書は本を棚へ戻し、会報の相違を一覧に加えた。
県の記録室から届いた返信には、会報が二種類あった理由も添えられていた。初版の誤植を訂正する際、寄付者への説明を加えた再版本が発行されたという。だがどちらが先に図書館へ納められたかは分からない。ミレイユは子どもたちの見学を案内した後、会報の貸出履歴を調べた。十年以上前、同じ姓の研究者が何度か閲覧している。研究者は今も大学で教えており、連絡先は公開されていた。彼女は古い会報の出所についてだけ質問状を送った。読み終えた本を元の棚へ戻すと、背表紙に残った裂け目が細い線のように見えた。
誰かが改ざんしたと決めつけるには早かった。書店で製本し直しただけかもしれない。まず、それぞれの版がいつ発行されたか確かめようと考えた。




