承認印の行方
エロディが保管施設の旧台帳を調べると、廃止された承認印の使用は三十年前に終わっていた。ただし、移管先を確認する欄には、それより新しい年代の記入がある。印を使う権限が残ったのか、古い形式を誤って流用したのか。
上司はこれを内部監査へ回すよう指示した。監査が始まると職員の仕事は増え、普段の貸出業務も遅くなる。受付には苛立った利用者が並び、エロディは何度も謝った。
昼休み、彼女は同僚に相談した。古い印がいまだに使われているなら大問題だ、と言われたが、エロディはそこまで判断していない。
「誰が押したか分からないうちは、押されたことさえ確かじゃない」
紙には写り込んだ印影もある。原本を見なければ、複写で増えたものかどうか区別できなかった。
夕方、監査担当者が地下の棚を開き、封印された箱を一つ確認した。保管票には「照会を受けるまで開封しない」と書かれ、宛先欄は空欄だった。
地下の箱には預かり札の番号が二つ付けられていた。古い棚を移した際の新旧番号だという説明は、記録上は理にかなっている。しかし裏側に書かれた受領日が、移動日の三週間前になっていた。エロディは監査担当者に知らせ、印の欠けた部分も撮影した。無理に箱を開ければ中身は分かるかもしれない。それでも、預託者への権利確認を飛ばすことはできなかった。施設長は法律顧問の立ち会いを手配し、次の確認日を決めた。エロディは時計を見上げ、家で待つ母へ遅くなると連絡した。
エロディは鍵を戻した。箱の中身より先に、その箱を預けた人物を確かめる必要がある。受付の時計は午後六時を指し、外では清掃車が道路を洗っていた。




