紙の透かし
ナディアが受け取った匿名の配送表は、印刷所の職人によって少し新しい紙だと判定された。内容が古いからといって、古い時代に作られたものとは限らない。複写された可能性もあった。
「偽物ですか」ナディアが聞くと、職人は肩をすくめた。
「紙の年代しか言えません。書いてあることの真偽は別です」
彼女はその答えを記事のノートへ書き込んだ。編集長は首都の慈善団体について記事を書けと言ったが、彼女は公共の補助金がどう配られているか、確認できた部分から始めたいと返した。
午後、市場の取材に出ると、古い魚屋が閉店の貼り紙を出していた。子どもたちは別の町へ移り、店を継ぐ者がいないらしい。長年ここで買い物をしてきた人々が別れを惜しんでいる。
ナディアは店主の写真を撮り、閉店の日付を控えた。取材を終えて事務所へ戻ると、配送表の番号に対応する公開予算書が届いていた。
予算書は町の議員が議会で一度質問していたものだった。ナディアは議事録を調べ、当時の担当者が「保管業務の共通費」と答えていたことを知る。会議で問題になったのは費用の大きさではなく、他の施設が予算を削られる一方で長期契約が守られる理由だった。質問した議員はすでに引退し、孫と暮らしている。ナディアは電話で面談を申し込み、説明できる部分だけ聞きたいと伝えた。老人は曖昧な記憶しかないかもしれないと断った。彼女はそれでも構わないと答えた。確かなものと不確かなものを分けるためだった。
予算書に記されていたのは輸送費ではなく、保存庫の管理費だった。同じ番号の用途が違う理由は、まだ分からない。




