引き継がれた机
会計会社のルイーズは、移転した部署の机から一冊の電話帳が残されているのを見つけた。中には古い取引先の番号が鉛筆で書かれ、何人かには転居先の名前が添えられている。会社は個人情報に当たるとして処分を求めた。
ルイーズはすぐには捨てなかった。処分の記録を残してから、法務担当の立ち会いを頼んだ。顧客の資料か従業員の私物か、確かめる必要があったからだ。
昼休み、若い同僚が転勤を断ったと話した。病気の父を置いて国境の向こうへは行けない。ルイーズは引き留める言葉を探せず、退職手続きの担当を一緒に調べた。
夕方になって、警察から屋敷の過去の請求書に関する照会が届いた。電話帳には同じ法人の古い連絡先が載っている。ただし名前の横には「閉鎖」と書かれていた。
彼女は電話帳を持ち出さず、管理者へ保全を求めた。翌日には正式な提出命令が必要になるだろう。
法務担当は電話帳の保全に同意したが、全員の個人情報を捜査官へ渡すわけにはいかないと説明した。ルイーズはうなずいた。自分の机に置かれた名簿が誰かの生活を傷つけることもある。会社を去る同僚は、電話帳の中の一つの数字が今は使われていないと教えた。以前の管理部へつながる専用回線だったという。電話会社の記録を取り寄せられるかは、会社の権限を越えている。ルイーズは彼の言葉を内部記録へ残した。机の引き出しには、まだ行き先が決まらない書類が何束もあった。
窓の外で清掃員が照明を消し始めた。かつて十人が働いた部屋は、今は誰の担当でもない。残された机が、空席の理由を語ることはなかった。




