番号の発行元
シモンは検査室の古い台帳を机に広げた。ルカの試料に付された番号と、屋敷の輸送伝票に使われた番号。最初の四桁が同じなのは偶然ではないかもしれないが、それだけで一つの事件にはならない。試料の保存期限は迫り、病院の事務室は改装工事の騒音で落ち着かなかった。
「どこがこの番号を出したんですか」アンリが尋ねた。
「以前は県の共同管理室です。今は統合されています」
統合先の名称には二度線が引かれていた。古い部署が新しい看板を掛けたのではなく、保管する物の種類によって業務が別々へ分かれたらしい。シモンは発行年ごとの規則を照合し、同じ四桁が公文書にも荷物にも使われた時期を見つけた。
午後、診療所から箱が届いた。空欄のまま保管されていた委託契約の写しで、契約者の名前よりも、契約が自動更新される条件が細かく書かれている。シモンは紙を触る前に受領時刻を記した。手違いで届いたものなら、なおさら手順が要る。
検査室の廊下で若い職員が弁当を温めていた。明日の夜勤を代わってほしいと頼まれ、シモンは予定表を見た。数字を追う仕事の外にも、それぞれの暮らしがある。
番号表を知る引退技師が、シモンの問いに答えた。かつて医療試料と建材の納品を同じ事務室で扱っていた時期があり、番号が似るのはその名残だという。一方で、秘密にすべき患者情報がどこまで記載されていたかは、担当外なので知らない。技師は自宅の畑で収穫した林檎を渡し、最初の管理主任の名だけを教えた。すでに亡くなった人物だった。シモンはその名を控え、遺族へ無用な疑惑が向かぬよう注意して調べることにした。昔の仕事は誰か一人が作ったものではない、と技師は最後に言った。
書類の末尾には発行元の古い印があった。読み取れるのは県名ではなく、共同保全を示す二文字だった。




