雨の検証
春の雨が続く夜、マチューとアンリは最初の傷害事件が起きた建物を訪れた。室内はすでに修繕されていたが、管理会社の写真と工事記録が残っている。捜査班は事実関係を再検討し、以前の仮説に誤りがないか確かめた。
建物には別の住人が入っており、捜査官の姿を嫌がった。マチューは事情を説明し、必要な確認だけで帰った。住人には、過去の犯罪とは関係のない生活がある。
被害者の供述を読み直すと、拘束された時間が記憶と合わない部分があった。負傷と心理的な混乱を考えれば不自然ではない。警察は新しい供述を求める前に、医師へ面談の可否を相談した。
「これであの女を逮捕できますか」
アンリが尋ねた。
「逮捕するための材料を作るな。起きたことを確かめろ」
アンリは帰署後、最初に提出した現場報告書を読んだ。自分は女性の身長を一つの証言に合わせて記していたが、他の証人は数字を挙げていない。誤りに気づいた彼は訂正を申し出た。マチューは受理し、訂正前の記録も保存した。新人が間違いを認めることは容易ではない。それでも、誤った数字を残して捜査を進めれば別の人間を疑うことになる。マチューは訂正印の横に署名した。窓の外では訓練を終えた警察犬が水を飲んでいた。
帰り道、道路脇の花屋には灯りが残っていた。店主が入院中の妻のために花束を作っているという。マチューは車を止めず、ゆっくり通り過ぎた。
署へ戻ると、隣県から新しい負傷者の照会が届いていた。報告に記された質問は、倉庫と医療資料に関わるものだった。マチューは時間を確かめ、担当者へ連絡した。




