残った一通
クレールが家を離れてから三週間が経った。ジュリアンは夜勤を続け、ローズがときどき食事を届けた。手紙は一通だけ届いた。消印は国境近くの町で、差出人の住所はない。
『ルカのことを忘れないでください。あなたのせいではありません。』
ジュリアンはその一文を何度も読んだ。責められていないのに、責められた気がした。自分が現実の生活を選ぶほど、妻だけが冷たい寝台の横に取り残されていく。
彼はマチューに手紙を見せた。捜査官は複写を取り、危険が迫っていると思う事情はないか丁寧に尋ねた。ジュリアンは妻を守りたいと答えたが、誰から守るのか分からなかった。
工場では新品の部品が入荷し、長引いた修理が終わった。主任は皆に温かい食事を奢った。ジュリアンも席に加わり、久しぶりに同僚の冗談へ笑った。
近所の人々は、クレールが姿を見せなくなった理由をそれぞれ語った。病気の親族を看ているという者も、昔の知人を頼ったという者もいる。ジュリアンはどちらも否定しなかった。彼にできるのは、郵便が届く住所を維持し、家の暖房を止めないことだった。職場の人は引っ越しを勧めたが、彼はまだ決められなかった。ルカが暮らした家を出れば、妻が帰る場所まで失われるように思えた。夕食のあと、隣家の窓が暗くなったのを確かめてから、玄関の灯りを一つだけ残した。
帰宅すると、クレールのカップが食器棚に残っていた。誰かを待つための物ではなく、もうそこに置く理由を変えられない物だった。
手紙は引き出しへしまった。次が届くかどうか、誰にも分からない。




