捜査本部の窓
地方検察官セリーヌは、複数の傷害事件を調べるため合同会議を開いた。県都と郊外の担当者が集まり、それぞれの証拠を机に並べる。どの事件にも女性の存在を示す供述はあるが、誰も同じ人物だと断言できなかった。
会議の途中、若い捜査官がクレールの写真を示した。乳児死亡の遺族だという説明に、室内の空気が変わった。
「遺族だからこそ調べるな、という話ではありません」
セリーヌは言った。
「遺族だから犯人だと決めてよい、という話でもない」
会議では捜査手順を確認し、被害者保護の優先順位も決めた。捜査官の数は限られ、別の事件も同時に起きている。合同化したからといって、町の安全が自動的に守られるわけではなかった。
合同会議の資料には、クレールが家を出たというジュリアンの説明も含まれていた。成人の自由な移動と捜査の必要性を、どう両立させるかが話し合われた。彼女が犯罪に関わるかもしれないという疑いは消えない。しかし家族の不幸を理由に、すべての行動を監視してよいわけではない。セリーヌは法的な限界を説明し、必要な許可を取る際の根拠を整理した。急ぎすぎれば、後から正しい証拠まで疑われることになる。
出席者には地方署から来た者もいれば、重大犯罪だけを扱ってきた者もいた。互いの常識は少しずつ違い、会議は予定より長くかかった。だがその遅さこそ、ひとりの思い込みを防いでいた。
マチューは窓際の席から外を見た。広場では子どもたちが風船を追い、教師が人数を数えていた。ルカが生きていれば、まだ歩き始める頃にもなっていない。
帰り際、アンリはクレールの聴取を提案した。セリーヌは手続きに沿って進めるよう指示した。廊下では記者たちが待っていたが、会議の内容は明かされなかった。




