中庭の負傷者
別の都市で、元運送会社の役員が負傷して見つかった。発見場所はホテルの中庭で、本人は何日か前から連絡を絶っていた。警察は逃亡の可能性も含め、経緯を調べ始めた。
その男も、かつて屋敷と倉庫を結ぶ輸送契約に関わっていた。マチューは県都の捜査班から連絡を受け、以前の傷害事件と共通点があるか検討した。報道で知られた情報ばかりを結びつけてはならない。
被害者は女性の声を覚えていたという。ただし顔は見ておらず、話された言葉を正確に再現できない。医師の診断を優先し、面談は数日後に延期された。
「二人とも、存在しない会社の名前を聞かれている」
アンリは資料を並べた。
「それでも同一犯と決めるのは早い」
マチューは答えた。
中庭を清掃したホテル職員は、被害者のことをよく覚えていた。毎朝同じ時間に新聞を買い、店員へ礼を言う客だったという。事件の日だけ早く部屋を出たことは確かだが、呼び出されたかどうかは知らない。地元警察は清掃員の勤務日誌を確認し、物音の時刻を記録した。小さな違いを丁寧に積むしかない。被害者の妻からは、病院の支払いと仕事の休職について相談が来た。捜査は家計の心配を代わりに引き受けられなかった。
ホテルでは結婚式の準備が進み、職員たちは負傷者のいた中庭を使わないよう客を案内した。遠くから来た家族にとって、その日は祝いの日だった。事件は人々の予定をすべて奪うわけではない。
夕方、警察は移動記録の共有を決めた。県境を越える捜査は複雑で、互いの手続きが違う。だからこそ、急いで結論を出すことは許されなかった。




