開いたままの門
マチュー・ルグランは小さな町の捜査では、閉じた扉より開いた門を先に確かめる。人が自由に出入りできる場所には、記録に残らない出来事が多いからだ。
モロー家の門には故障がなかった。蝶番には新しい油が差され、鍵は内側からも外側からも掛かる。道路を挟んだ花屋の主人は、その朝、黒い車を見たと言った。ただし車種も人数も曖昧だった。
「娘の通学時間なら、何台も通ります」
花屋はそう言って、店先の鉢を風の当たらない側へ移した。
マチューは市場の監視映像を回収した。車の後部しか映っていない。番号も読めない。それでも映像を保存し、町外へ出る道を地図に引いた。山道は二つ、幹線道路は一本。どれも平日の午前中には交通量がある。
花屋の主人は午後になると、学校から戻った娘に店を任せて病院へ行く。妻の治療は長引いていた。捜査官が同じ質問を何度もするので、彼は腹を立てかけたが、モロー家の窓に閉じたままの雨戸を見ると、言葉を飲み込んだ。
署に戻ると、上司が机に紙の書類を置いた。急ぐようにという電話が県の事務所からあったらしい。電話の相手は事件名を正確に言えたのに、誰が担当かを尋ねなかった。
「上が気にしているんでしょうか」
「分からん。だから記録しておけ」
マチューは電話が来た時刻も書き足した。
帰り際、庁舎の清掃員が、亡くなった子の母親が外で待っていると知らせた。クレールは椅子に座り、小さな手帳を膝に置いていた。何かを尋ねられるたびに日付と名前を書き留め、答えのなかった質問にも番号を振っていた。
マチューはまだ、その手帳をありふれた遺族の記録だと思っていた。




