誰かの自白
県都の男が、倉庫に出入りした全員の名前を知っていると主張して警察へ現れた。身なりの整った中年で、話し方も落ち着いている。マチューが来るまで待つと伝えると、男は突然、ルカの死についても自分が関係したと言い出した。
事情聴取では時刻や場所の説明が変わり、医療資料に関する知識も報道済みの内容を出なかった。セリーヌは慎重に供述の信用性を調べるよう求めた。
「誰かを庇っているんでしょうか」
アンリが尋ねた。
「分からない。自分のために嘘をつく人間もいる」
男の妹が迎えに来た。本人は病気の治療を中断しており、最近、ニュースを自分のこととして語るようになったという。医師の診察につなぎ、違法行為の有無は別に調べることになった。
一方、クレールが男の名を知ったという話が町で広まった。誰が伝えたのか確かめられない。ローズは噂を聞いて不安になり、ジュリアンへ電話した。
男が警察へ来た理由を知ろうと、妹は古い手紙を見せた。そこには家族を安心させたい、働き直したいという言葉が何度も出てきた。男は最近、新聞で読んだ事件に執着しており、自分なら終わらせられると言っていたらしい。マチューは家族の苦痛も記録した。誰かを捕まえるための嘘が、別の人を救うと男は信じたのかもしれない。それでも捜査官は動機を決めず、診療につなげた。新聞社へは誤報を防ぐための説明だけが渡された。
その夜、ジュリアンは妻に男の話をした。クレールは新聞の記事を一度見ただけで、誤りの箇所を指さしたという。翌朝、彼女の手帳からその紙面が消えていた。
嘘の自白は捜査を終わらせなかった。むしろ、名乗り出た男の周囲に新しい危険を生んでいた。




