封印された肖像
アルマンは写真館から連絡を受け、屋敷の歴史資料について意見を求められた。古い写真に写る男は、かつて地域の慈善事業に資金を出した一族の代理人らしい。だが公的な名簿に、同じ名前の人物が複数いた。
屋敷の管理人ギヨームは、肖像画の部屋へ案内した。白い布を取ると、額縁の下に小さな金属板があった。名前は削られている。公証人は手を触れず、記録用の写真だけを撮った。
「いつからこうなっていたんです」
「私が勤め始めた頃には、もう」
建物を公開する計画はないかと尋ねても、管理人は契約にないと答えた。彼には屋根から落ちる雨水の方が重要で、修理費を減らされると困る。歴史の秘密で給料は支払えないのだ。
帰りにアルマンは町史編纂委員へ電話した。寄付者の記録を公開するかどうかは、個人情報や遺族の意向にも関わる。すぐ答えは出なかった。
町史編纂委員は、屋敷が長年地元の職を支えてきたことを説明した。農園の管理、礼拝堂の清掃、冬道の補修。土地の所有者が変わっても仕事だけが続き、記録には多くの人の生活が積もっている。アルマンは所有者を公表すればすべてが分かるとは考えなかった。古い文書の証拠能力には限界があり、似た名前を一つに結びつければ無関係な家族を巻き込む。編纂委員も慎重さに同意し、所在の判明した写真だけを一覧へ加えた。
屋敷の門を出ると、砂利の上に細かなタイヤの跡が残っていた。数年前より人の出入りは少ないはずなのに、除雪のあとも新しい跡ができる。
アルマンは日付を記した。歴史に残る顔より、今そこを使う人間の名前を知りたかった。




