川沿いの写真館
ナディアは町で最も古い写真館を訪れた。屋敷の昔の姿を調べるためだったが、店主は依頼主の名も記録も簡単には見せなかった。代わりに公開済みの町史を出し、ページを開いてくれた。
一枚の写真に、屋敷前で並ぶ紳士たちが写っていた。中央の男の顔は日焼けしておらず、周囲から少し離れている。説明文には、寄付者を代表する人物とだけ書いてあった。
「名前は分かりますか」
「うちの祖父なら覚えていたかもしれませんね」
店主は祖父の古い帳面を持ってきた。祭りの撮影、学校の卒業式、結婚式。日付と料金が書き込まれた中で、屋敷の撮影だけは請求先が空欄になっている。
店主の妻は、倉庫から運んだ古い箱を棚へ戻してほしいと頼んだ。店は狭く、赤子用の記念写真の衣装を置く場所もない。ナディアは二人の作業を手伝い、無断で箱を開けなかった。店主はその姿を見て、祖父が撮った写真にはまだ整理できていないものが多いと打ち明けた。新聞記者にとって価値があるのは事件に関わる一枚かもしれないが、家族にとっては祖父の残した仕事すべてだった。翌月、町立図書館が保存の相談に乗ることになった。
その日は観光客が増え、店には家族写真を撮る客が二組来た。小さな娘が笑わずに立っていると、店主は玩具の鳥を取り出して見せた。少女が顔を上げた瞬間、ナディアはルカの写真を思い出した。
閉店後、店主から電話があった。祖父の遺した箱に、同じ紳士たちが別の日に撮られた写真もあるという。ナディアは翌日の予約を取った。古い顔の名前を知る者が減る前に、記録を残したかった。




