半地下の証言
傷害事件の被害者は、病院の面談室で二度目の事情聴取を受けた。最初の供述には空白が多かったが、時間を置いたことで一部の記憶が戻ったという。担当のアンリは録音機の動作を確かめ、話せるところだけ話してほしいと伝えた。
被害者は倉庫に医療器具を納めた経験があると認めた。ただし納品先の正式名称は知らず、現場へは運転手に案内されただけだった。
「その女性は、そこへ入った人間の名前を欲しがった」
「知っていたんですか」
「一人も知りません。何度言っても信じなかった」
負傷の程度だけでは、犯人の経験や目的を断言できない。それでも供述に残る反復の激しさは、単なる金品目的の犯罪と異なっていた。
被害者の妹は兄が若い頃、古い倉庫の仕事を嫌っていたと話した。契約書が頻繁に替わり、手数料の振込日が不規則だったという。嫌だった理由は犯罪の存在ではなく、労働条件の悪さだったかもしれない。アンリは妹の言葉を正確に記録し、兄に確かめられるか尋ねた。彼女は少し考えてから、今日は休ませてほしいと言った。捜査官は応じた。すべてを一日で解き明かすことより、次の面談に応じてもらえる信頼が大切だった。
面談室の廊下で、被害者の妹が待っていた。遠方から列車を乗り継いできたらしく、靴の紐がほどけている。兄を見つけると怒鳴り、その直後に泣き出した。アンリは二人が落ち着くまで席を外した。
署へ戻ったマチューはクレールの行動記録と被害者の証言を照らし合わせた。重なる場所はあったが、事件の時間を限定するには足りなかった。疑いを抱くことと立証することの間には、まだ深い溝があった。




