↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
息子の死因を教えてください――ある母親の復讐  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/228

水のない噴水

古い屋敷の管理人ギヨームは、冬の朝に噴水の底を掃除していた。水を出さなくなって久しい石鉢には、落ち葉が溜まりやすい。門の向こうで公証人アルマンが車を降りたのを見て、彼はほうきを置いた。


「除雪費の承認はまだですよ」

「その前に、通行記録を確認したいんです」


ギヨームは手帳を渡した。夜間の搬入日、清掃員の出入り、植木の手入れ。記入は几帳面だったが、利用者の氏名欄だけが契約番号になっている。事務所の指示に従った結果で、彼自身も利用者の正体を知らなかった。


屋敷の奥では古い暖房設備が鳴り、週に一度来る修理人が配管を見ていた。長い廊下には白布の掛かった肖像画があり、誰も住まない建物の割に電気代が高い。管理人の給料は滞りなく支払われていた。


アルマンが原本の署名の件を尋ねると、ギヨームは肩をすくめた。法務のことは知らない、と言う。彼の仕事は鍵を開け、庭木を枯らさないことだった。


ギヨームが屋敷の管理人になったのは、父親の介護費が必要だったからだ。前の職場が閉鎖され、ほかに条件の合う仕事はなかった。所有者の顔を見たことはほとんどないが、給料が期日に振り込まれることに感謝している。門の外で子どもが雪を丸めて投げ合うのを見ると、故郷に残した娘を思い出した。知らないことが多い場所で働く不安はあっても、今すぐ職を失う方が怖かった。彼は日誌を閉じ、裏庭の雨樋を点検した。


帰り際、公証人は噴水の縁に残る新しい泥を見た。ギヨームは運搬車のタイヤだろうと説明した。どちらにも、それ以上を証明するものはなかった。


門が閉まるとギヨームは清掃を再開した。水のない噴水の底には、紙くず一つ落ちていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。