水のない噴水
古い屋敷の管理人ギヨームは、冬の朝に噴水の底を掃除していた。水を出さなくなって久しい石鉢には、落ち葉が溜まりやすい。門の向こうで公証人アルマンが車を降りたのを見て、彼はほうきを置いた。
「除雪費の承認はまだですよ」
「その前に、通行記録を確認したいんです」
ギヨームは手帳を渡した。夜間の搬入日、清掃員の出入り、植木の手入れ。記入は几帳面だったが、利用者の氏名欄だけが契約番号になっている。事務所の指示に従った結果で、彼自身も利用者の正体を知らなかった。
屋敷の奥では古い暖房設備が鳴り、週に一度来る修理人が配管を見ていた。長い廊下には白布の掛かった肖像画があり、誰も住まない建物の割に電気代が高い。管理人の給料は滞りなく支払われていた。
アルマンが原本の署名の件を尋ねると、ギヨームは肩をすくめた。法務のことは知らない、と言う。彼の仕事は鍵を開け、庭木を枯らさないことだった。
ギヨームが屋敷の管理人になったのは、父親の介護費が必要だったからだ。前の職場が閉鎖され、ほかに条件の合う仕事はなかった。所有者の顔を見たことはほとんどないが、給料が期日に振り込まれることに感謝している。門の外で子どもが雪を丸めて投げ合うのを見ると、故郷に残した娘を思い出した。知らないことが多い場所で働く不安はあっても、今すぐ職を失う方が怖かった。彼は日誌を閉じ、裏庭の雨樋を点検した。
帰り際、公証人は噴水の縁に残る新しい泥を見た。ギヨームは運搬車のタイヤだろうと説明した。どちらにも、それ以上を証明するものはなかった。
門が閉まるとギヨームは清掃を再開した。水のない噴水の底には、紙くず一つ落ちていなかった。




