遠回りする救急車
ヴァルノワの橋の工事が長引き、救急車が別の町を経由するようになった。病院では搬送時間への不安が高まり、道路課と消防が臨時の動線を確認した。シモンも技術職として予備電源の点検に参加した。
会議のあと、検査室へ戻ると、別病院から保存容器の照合に必要な文書が届いていた。封印の交換歴は一度ではなく二度ある。どちらも施設移転に伴う通常手続きと記されている。
しかし最初の交換日は、ルカの死亡より前だった。シモンは日付を見直し、容器そのものが以前から使われていた可能性を考えた。
シモンは当直の交代時刻を確かめ、緊急検査を担当する後輩へ連絡を残した。後輩は短く返事をし、搬送された患者のため新しい試薬を準備していた。
道路課の担当者は搬送時間の短縮を検討するため、運転手から意見を聞いた。橋を使えないことで、遠い病院へ向かう患者が不安を感じているという。シモンは救急対応の技師が不足する日程を整理し、必要に応じて隣町へ応援を頼む準備をした。保存容器の交換履歴を読みながら、最初の封印がルカとは別の検体に使われていた可能性を考えた。同じ容器を洗浄して再使用する規則があった時代なのか、製造元へ問い合わせた。病院の窓口では、診察の順番を待つ親子が椅子に並んでいる。シモンは予定表を見直し、今日の患者に必要な仕事を先に片づけた。
昼の救急外来では、転んだ子どもの手当てが行われていた。医師が安心するよう声を掛け、母親は濡れた上着を畳んだ。シモンはその脇を通り、検査結果を届けた。
彼はすぐ結論を出さず、容器の個体番号と中身に付く患者番号を分けて照会した。廊下では救急車が到着し、看護師たちが急いで出迎えていた。




