古い境界標
屋敷の私道を調べるマチューは、森の中で苔に覆われた境界標を見つけた。石には昔の地主の頭文字が刻まれている。所有権を示すものではなく、測量の目印だと道路課は説明した。
近くの農家は、その土地を長く使っていないという。以前は冬になると除雪車が通ったが、今は別の道が使われる。マチューは話を聞き、当時の道路維持記録を照会した。
午後、オリヴィエが新しい勤務先から寄せた写真に、同じ境界標が写っていた。庭師の仕事で植樹範囲を確認したとき撮影したものだった。
農家は屋敷の古い道を指し示すとき、昔あった大きな梨の木の位置を覚えていた。今は切り株だけがある。マチューは地図へ目印を書き込んだ。
測量図に残る細い道は、今の地図では林の一部になっていた。農家は子どもの頃そこを自転車で走ったと話し、冬には水が溜まって通れなくなったと覚えている。マチューは現地の地形を確かめ、車が通れた時期を年代別に分けた。オリヴィエの写真には境界標の横に小さな鉄柱が写り、私道を閉鎖した際の標識の基礎らしい。道路課の主任は鉄柱の管理が町ではないことを説明した。夕方、調査を終えたマチューは帰路で農産物直売所に立ち寄った。店の主人は橋の工事が終われば客が戻るだろうと話した。彼は野菜を買い、署へ戻った。
古い道の入り口には倒木があり、今は車が通れない。道路課は土地の所有者に安全確認を求めており、切り株の位置も地図へ残すことになった。風が吹くと枝が低く揺れた。
マチューは屋敷の所有者を疑う前に、写真の位置を測量図へ重ねた。古い道は川沿いの倉庫の裏口へ続いていた。道そのものは残っているが、今は柵で閉じられている。




