求められなかった署名
セリーヌは回収通知の原本を確認した。旧規約の委任を終了する文書には、署名した役員の名前がある。しかし通知が効力を持つには受領者の確認が必要で、その欄は空白のままだった。
法律事務所の担当弁護士は、送付記録があれば受領の推定は可能だと主張した。セリーヌは推定と証明を区別し、郵便記録と法人の移転履歴を求めた。
昼過ぎ、別件の証人保護の申請があり、彼女は書類を閉じた。窓口へ来た女性は名前を呼ばれることさえ怖がっている。職員は待合室の別の席を用意した。
古い郵便局の受領簿は月ごとに束ねられており、すぐには見つからないと連絡があった。セリーヌは期限を定め、必要な期間だけ保存を求めた。
発送台帳を見た書記官は、訂正の字形が違うと気づいた。一人が二度直したのか、別の担当者が後から書き加えたのか。セリーヌは鑑定に回す前に、文書の保管経路を確かめる必要があると説明した。地方の郵便局にも記録が残っている可能性があり、公式の照会を準備した。昼休みには同僚の子どもが熱を出し、セリーヌは午後の窓口を引き受けた。急な欠勤を責める職員はいなかった。机へ戻ると、法律事務所からの回答に「記録整理中」の文字がある。期限を過ぎたわけではない。彼女は日程を確かめ、再照会の日付を手帳へ書いた。
宛先の町は古い表記と新しい表記が混在していた。セリーヌは地図帳を開き、行政区画の変更日も照会するよう指示した。訂正した理由が見つかるかもしれない。
夕方、郵便の旧台帳が届いた。発送元は会館でも法律事務所でもなく、信託の管理会社だった。そこには手書きの訂正が二か所あり、一つは日付、もう一つは届け先の町名だった。




