消えなかった領収書
ルイーズは父の退院に付き添ったあと、会社へ戻った。机には以前の屋敷管理法人から届いた領収書の写しが積まれている。解散した会社へ支払ったはずの保守費が、後継ではない別会社に移っていた。
電子記録の契約番号は同じだが、紙の領収書には新しい承認者の手書きがある。上司は印鑑の真偽を会社だけで判断するなと言った。ルイーズもそのつもりだった。
夕方、税務の担当者から回答があり、領収書の支出目的が「保管物監督」から「施設安全」へ変更されていると分かった。金額は小さい。誰かの資産を隠すには、あまりに日常的な支出だった。
領収書を閉じる前、ルイーズは前年と前々年の支出額を確認した。増減は小さいが、ずっと同じ名目が続いている。紙の端には異なる担当者の印が並んでいた。
監査の後輩は、古い領収書を年代ごとに仕分けした。破れた紙を補修しながら、どの書類も誰かが実際の支払いに使ったものだと実感していた。ルイーズは後輩へ、不一致を見つけても相手の意図まで推測しないよう教えた。夜、家の台所で父が昔の歌を口ずさんだ。娘の顔を見ても名前が出ないことはあるが、歌の終わりだけは覚えている。ルイーズは一緒に歌い、翌日の薬を用意した。翌週の監査会議では、支出目的の変更が一度でなく何年も続いていることを示す資料が必要になる。彼女はパソコンを閉じ、休日に確認するファイルを紙に書いて残した。
彼女は疑いを大きくせず、支払先の代表者がどの時期に交代したかを一覧にした。父から電話が入り、夕食の塩を控えてほしいと頼まれた。ルイーズは帰りに野菜を買った。




