山道の折れた枝
アンリは行方不明の元輸送会社役員について、山道の捜索を続けていた。発見された車の扉には争った跡が見えないが、男が自分で降りたことも証明できない。消防団が新たな区域を調べ、登山者の通報を集めた。
古い作業小屋で、封の破れた薬袋が見つかった。氏名は読めず、日付だけが残る。アンリは現場写真を撮り、薬局への照会を申し込んだ。
その午後、失踪者の妻が温かい飲み物を持ってきた。隊員たちへ配ろうとしたが、アンリはまず本人に座るよう勧めた。「探している間、あなたまで倒れてはいけません」
消防団の隊長は若い団員の足元を見て、濡れた靴下を替えるよう指示した。ひとり倒れれば捜索を続けられない。小屋の窓は割れており、調べる前に安全確認が必要だった。
山道では日が落ちるのが早い。消防団の若者は捜索の後で手袋を乾かし、経験のある隊員から斜面の歩き方を教わっていた。アンリは地図に赤い線を引き、すでに調べた区域を重複して歩かせないようにした。途中で出会った猟師が、山小屋の煙突から煙を見たと話したが、いつのことか思い出せない。アンリは話を否定せず、季節を特定できる手掛かりがないか尋ねた。男は木の葉が色づいていたと言うだけだった。妻へは捜索の進み具合を説明し、不確かな情報で期待させないよう気を配った。寒さに押されて、隊員たちは一度村へ下りた。
戻った団員には村の人が温かい汁物を配った。アンリは湯気の向こうで、捜索地図をもう一度開いた。
夕方、薬袋は別の登山者のものと判明した。無関係な発見だった。それでも作業小屋の奥に、人が最近使った形跡がある。隊員は安全を確かめ、翌朝調べ直すことにした。




