空欄の投票
首都の会館で、名誉職の承認権を一時停止する動議が採決にかけられた。会員は賛否を分け、長年寄付してきた人々ほど古い規約を残したがった。議長は一人ずつ発言を認めた。
若い監査役候補は、支援を受ける施設の予算を理由に迅速な決定を求めた。対して古参理事は、契約を急に変えれば保管資料の所有を巡る訴訟が起きると警告した。どちらの心配も会場からは消えない。
採決は僅差で延期された。書記は白紙の投票用紙を数え、全てを封筒へ入れた。古い役職の持ち主は会場にいないはずなのに、出席者の目は空いた椅子へ向かう。
議長は会議を閉じる前に、翌月の福祉施設への送金だけは遅らせないと約束した。書記は口頭の約束だけにせず、暫定決議の草案へその条件を記した。
書記は採決用紙を数えながら、賛成と反対の理由が一つではないことを痛感した。ある理事は施設の給料を守るため延期に票を入れ、別の理事は秘密の慣行が終わるのを恐れて同じ票を入れた。紙の上では区別できない。若い監査役候補は帰りに立ち寄り、会館が閉鎖されることだけは避けたいと語った。書記は職員の仕事を失いたくないと答えた。二人は意見が完全に一致したわけではないが、翌月の予算表を改めて読み合わせることになった。会議室の窓からは帰宅する清掃員の背中が見えた。彼女は次の日の学校行事に出るため、いつもより早く帰った。
明日の予定表には会議のほかに職員の避難訓練も入っていた。書記は最後に時刻を確かめた。
帰り際、会館の清掃員が「今日は長かったですね」と声を掛けた。書記はうなずき、来月の設備点検の表を渡した。議論が終わらなくても、建物は明日も開く。




