途切れた送金
ルイーズが確認した海外口座の一つで、古い保管契約の支払いが止まっていた。請求を出していた業者が解散したためと銀行は説明する。しかし解散の翌月にも、別の会社が同額を受け取っていた。
彼女は会計監査に新旧の法人登録簿を提出した。代表者の姓が違い、同じ会社の継続とは言い切れない。勤務先の上司は取引先を刺激するなと忠告したが、照合すること自体は正式な職務だった。
昼休み、ルイーズの父が入院したと連絡が入る。同僚が仕事を引き受け、彼女は電車で病院へ向かった。父は息子の名前と彼女の名前を時折取り違える。家に戻ると、会社の封筒が机の上にあった。
帰宅したルイーズは父の薬の時間を紙に書き、冷蔵庫へ貼った。仕事の数字とは別の数字も、間違えるわけにはいかなかった。洗濯機が止まる音を聞いてから、ようやく椅子に座った。
契約を移した新会社には、ほかにも公共施設の保守を請け負う実績があった。ルイーズは決算書を読み、利益率も極端ではないと確認した。奇妙な支払いを見つけたからといって、会社全体が不正に関わるわけではない。病院では父が久しぶりに昔の学校の話をした。教室にあった薪ストーブの匂いを覚えているらしい。娘の名前を忘れることがあっても、あの冬のことは覚えている。ルイーズは廊下で短く泣き、戻ると夕食に付き合った。監査の封筒は机に残っていたが、翌日には何十年分もの取引を一度に結論づける必要はなかった。まず代表者変更の届出から確かめることにした。
監査役へ送る予定の資料だった。彼女はその夜、封を切らなかった。翌朝になってから、法人の登記日を一つずつ確かめ、添付した。




