待合室の時計
マチューは県都の病院で傷害事件の被害者と会った。男は以前より歩けるようになったが、廊下の足音に敏感だった。加害者は女性だったと語り、同じ質問を何度もされたことだけは確かだという。
「知らないと答えた後、どうなりましたか」
男はしばらく黙った。「知っていないはずがない、と言われました」
医師の勧めで聴取は短く終えた。男が証言を変えても、警察は以前の言葉を消さずに残した。廊下では新生児の診察を待つ父親が、寝袋のような包みを抱えている。
午後、マチューは音声の比較について専門家の報告を読んだ。クレールと似た声の可能性は否定できないが、古い録音の状態では断定できない。彼は記録を閉じ、被害者が仕事に復帰できるよう支援窓口へ連絡した。
マチューは病棟の出口で担当看護師に礼を述べた。誰が何を証言したかより、次に安心して眠れる夜がいつ来るかを心配している人がいた。
病院の看護師は、男が初めて自分から散歩へ出たいと言ったと話した。以前は廊下の窓さえ怖がっていたという。マチューはその報告を受け、再度の聴取は本人の体調に合わせると約束した。事件の担当が県をまたいでいるため、問い合わせる官署が違うたび被害者が同じ話をさせられる。アンリへ電話し、質問事項を共有することにした。男の妻は家計の心配をしていたが、夫の前ではその話を避けている。マチューは支援担当者に彼女の面談も依頼した。帰署すると、机の隅に子どもたちから届いた交通安全の絵が置かれていた。彼は一枚を廊下へ飾った。
帰る前、男は一つだけ言った。「あの人は怒っていなかった。だから次に何をするのか分からなかった」




