↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
息子の死因を教えてください――ある母親の復讐  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
122/240

試料に付いた霜

シモンは別病院の冷蔵倉庫へ向かい、古い保存容器の封印を立会人と確認した。番号はルカの記録と一部一致する。しかし札は交換され、保存温度も連続した記録ではない。身元の照合を急げないことを、同行した看護師も理解していた。

容器の外側には霜が残り、棚には別の患者の試料も並んでいた。シモンはそれらを動かさず、保管担当者から移設当日の作業記録を受け取った。搬入時刻は書かれているのに、搬出元の病院名が一行だけ空白だった。

午後、倉庫で停電対策の訓練が始まり、職員たちは慣れた動きで予備電源を点検した。数十年前の資料でも、今ここにある以上は守る責任がある。


保存庫の窓には結露が広がっていた。担当者は布で拭き取り、冷却機が止まっていないことを確かめた。外へ出たシモンの頬に、雪混じりの風が当たった。


保存庫の担当女性は、この倉庫で二十年以上働いているという。かつて大雪で道路が閉ざされた日、病院からの搬送品を運ぶため職員が寝泊まりしたと話した。冷蔵庫の番号を覚えていても、患者の顔は知らない。それでよいのだと彼女は言った。シモンは担当女性へ、封印の交換に使う資材の型番を尋ねた。昔と今では同じ品でも規格が違い、記録の読み方を間違えることがある。女性は倉庫の古い購入台帳を探し、翌週までに複写できる範囲を知らせると約束した。帰り際、シモンは自分が期待しすぎていたことに気づいた。番号が似ているというだけで、父親へ良い知らせを持って帰れる気がしていた。


帰路、シモンはマチューへ結果を伝えた。同一の可能性はあるが確定していない、と何度も言い直す。電話の向こうでは町の学校が下校時刻を迎え、子どもたちの声が風に混じっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。