誰の血でもない印
アルマンは旧信託の承認者について、ようやく制度の変遷をつかみ始めた。名誉職は家系から引き継がれると説明されてきたが、規約を読む限り、実際の承認権は理事会が選任する役職に与えられていた。
「血縁がなくても座れるということですか」補助員が尋ねた。
「規約上は。現実に誰が選ばれていたかは別だ」
アルマンは公証人として、誰かの出生や相続について不確かな情報を広めないよう心がけた。赤線の付いた家系図は、今も封筒の中にある。
午後、住宅の相続相談があり、長く会っていない兄弟が一緒に事務所へ来た。二人は口論したが、最後には母の家を残すことにした。
補助員は家系図の赤線を引いた人物を探すことに慎重だった。信託の受託者と家族の名を混同している可能性があるからだ。アルマンはどの文書が法律上の効力を持ち、どれが単なる会報の記載かを色の違う紙で分けた。書類の一つには養子縁組の記録があり、系図だけでは分からない家族の広がりを示していた。本人たちの同意なく公表することはできない。夕方、町の老人が遠い親戚との相続争いについて相談に来た。アルマンは証明できる権利と、家族同士の感情が別のものであることを説明した。老人は少し落ち着き、家へ帰った。血統という言葉だけで人を数えることの危うさが、机の上の紙からも伝わってくるようだった。 アルマンは机に置いた家族写真を見た。記録の外にも暮らしがあった。
日が暮れてから、アルマンは役職の古い任命記録を調べた。署名者の名は消されていない。だが承認を求められた人物の名は、どの年も公表されていなかった。




