届かなかった命令
セリーヌが送った追加の保全命令は、宛先の部署が閉鎖されたため返送された。中央保管施設そのものは営業しているが、旧信託の窓口が移転したという。
若い書記官は苛立った。「また初めからですか」
「命令は消えない。届く先を確かめ直しましょう」
セリーヌは正式な登録を確認し、新しい窓口へ送る準備をした。制度の隙間を突かれていると感じても、相手が意図的に逃げたと決めつける材料はない。
午後、別件の証人が予定に遅れて到着した。公共交通の遅延が原因で、職員は時間を調整した。待つことと怠ることは同じではなかった。
夕方、移転した窓口の所在地が判明した。首都の会館ではなく、郊外の小さな法律事務所だった。
法律事務所へ送った二通目の命令は、翌日、受領された。書記官は日時と署名者を確認し、セリーヌへ報告した。新しい窓口の担当者は、古い記録のうちどれを自分たちが管理しているか調べたいという。セリーヌは必要な期間を認めながら、資料の現物が移される場合は事前に知らせるよう求めた。午後、裁判所には交通事故の遺族から感謝の手紙が届いた。答えが出ない理由を説明してもらえたことで、少し安心できたという。セリーヌは職員へ礼を伝えた。彼らが積み重ねる仕事は、誰かの怒りをすぐ消すものではない。しかし問いに正面から答え続けることが、信頼を守る方法になる。窓の外では雨が上がり、石段の水がゆっくり乾いていた。 電話を終えた職員は、配達員が使う受領簿まで確認していた。
セリーヌは二通の封筒を用意させ、受領の方法をそれぞれ変えた。法に沿った仕事の重さは、紙の枚数だけでは測れなかった。




