消された予定表
首都の会館で次回会議の予定が変更された。議長の都合だというが、書記には正式な依頼が届いていない。誰かが共有予定表を書き換えたらしく、変更前の記録だけが残っていた。
職員たちは会議室を片づけ、参加者へ連絡した。遠くから来る予定だった団体もあり、怒りの電話が続いた。
書記は議長へ理由を尋ねた。議長は別の会合と重なったためと答え、それ以上説明しなかった。
午後、会館の古い運転手が退職を申し出た。腰を痛め、長距離の運転が難しくなったという。職員たちはささやかな送別会を開き、長年の勤めをねぎらった。
運転手は昔、会館の裏口へ無名の客を迎えに行ったと話した。誰なのか知らず、行き先も指定された住所へ向かっただけだった。
送別会の終わりに、運転手は若い書記へ一冊の小さな手帳を見せた。仕事で走った距離や車の点検日が書かれている。古い乗客の名前はほとんど記載されていなかった。役職の高い人でも、行き先は出発前に告げられたのだという。書記が疑問を口にすると、運転手は「私は道を間違えないことが仕事だった」と答えた。記憶の残る場所を尋ねても、首都のいくつかの通りを挙げるだけだった。翌朝、会館では別の運転手の採用面接が行われ、職員が希望勤務を相談した。書記は手帳の話を調査用の記録へ勝手に移さなかった。本人の了承が必要だ。議長の変更指示については、改めて正式な連絡を求めることにした。 退職の挨拶は最後まで穏やかで、書記は手帳を持ち帰らなかった。
書記は好奇心を押しつけず、退職祝いの写真を撮った。予定表の空白は、翌月も残ったままだった。




