門番のない屋敷
冬の終わり、ヴァルノワ郊外の古い屋敷で、管理人の交代が決まった。屋敷は何十年も個人の持ち物ではなく、財団が維持している。帳簿を見る限り、町への寄付は毎年欠かさず、修繕費にも不自然なところはない。
公証人のアルマンは、移管書類にある一筆を見て手を止めた。屋敷から町へ通じる私道について、古い通行権がまだ有効になっている。最近はほとんど使われない道だ。
「今さら通る者もいないでしょう」
管理人はそう言った。だが門の鍵は毎月磨かれ、足元の砂利も均されていた。誰も通らない道にしては、手入れが行き届いている。
アルマンは制度上の疑問として、その道の管理責任者を照会した。翌日届いた返事には、見慣れない法律事務所の名前があった。県外に本拠を置く大きな事務所だ。町の寄付金とは別の予算で管理されているらしい。
アルマンの父も公証人だった。子どもの頃、父に連れられてこの屋敷の門をくぐった覚えがある。庭の噴水には水がなく、廊下の絵は白い布で覆われていた。当時は誰も住んでいないと聞いたが、厨房の煙突からは細い煙が上がっていた。
ちょうどその頃、新聞記者のナディアが屋敷の古い写真を探しに来た。町の冬祭りの記事に使うという。アルマンは公開できる写真だけを渡し、私道の書類は見せなかった。
嘘をついたわけではない。照会中の文書を外部へ出せないのは当然だった。
屋敷の裏手にある小さな礼拝堂だけは、今も週に一度清掃されている。その費用の支払者は管理簿に載っていなかった。
ナディアが帰ったあと、公証人は窓から私道を見下ろした。白い砂利の上に、細いタイヤの跡が一本残っていた。
雪解け水が、その端から静かに流れていた。




