古い職員証
首都の共同保管施設で、エロディは引退した職員の名簿を整理していた。廃止された承認印の権限を持っていた者の一人が、長年ラ・ヴェーヌ信託の事務所へ出向していたと分かった。
古い職員証には若い頃の写真があり、今どこに住んでいるかは分からない。退職者への連絡は個人情報に配慮する必要がある。エロディは上司と相談し、正式な依頼状を送った。
午後、施設の屋根の雨漏りが見つかり、利用者が一時避難した。職員たちは資料を乾いた棚へ移し、損傷の有無を確かめた。
封鎖室の箱は無事だった。エロディはそのことに安堵し、鍵を閉めた。
夕方、以前の職員から返事が届いた。自分は印を管理していたが、承認する権限はなかったという。実際の承認者の名は、書類に記されないことが多かったらしい。
引退した職員は施設の見学を希望した。かつて自分が働いた棚が残っているか気になるという。エロディは公開できる場所だけなら案内できると答え、上司の許可を得た。老人は階段の手すりをゆっくり握り、昔ここで夜勤をした仲間の名前を挙げた。ほとんどが退職し、何人かは亡くなっている。廃止された承認印について尋ねると、老人は「印を持っている人間と、押してよい人間は違った」と話した。それ以上は覚えていないという。エロディはその言葉を監査へ書き添え、記憶の不確かさも明記した。老人は出口で礼を言い、外のベンチへ腰を下ろした。かつて重い箱を運んだ手は、今は杖を支えるのに使われていた。建物が残っても、そこで働いた人は同じままではいられない。
エロディは返事を捜査資料ではなく監査記録へ入れ、正式に証言を求めるか上司と相談した。




