八、再会
凛は左衣と二人で湯を沸かしていた。
川に流れ着いた行者は、
凛の館に運び込まれて寝かされていた。
「息はありそうじゃな。」
医師の万草は言った。
「方々体を打ちつけておる。行者の修行にしては、ちとやりすぎじゃ。」
そういうと、目が醒めればとにかく飲ませる様にと、薬を置いていった。
「目が覚めるの見守っていた方が良いわよね。熱が出るかもって。」
と凛が言うと、
「そうだけど、あなたは寝なさいよ。」
と左衣に言われた。王廷に行った、館の主であるとと様はまだ帰って来ていない。
明日は朝から豊祈祭の衣を染めの仕上げ日だった。
「色は決まっているのよね。」
「ええ。」少し目を逸せて俯いた。
ふと碧玉の碧色が目に浮かんだ。
「あ、あの行者さん。この前、猪に会った時に助けてくれた人かも知れない。」
「まあ!」
左衣は驚いた。
「どうして行者がそんなに気になるの?御山は行者の里のはず。」
実際、行者の里は天狗の里とも呼ばれて家族の様に御山を守っていた。
どれくらいの人数が住んでいるかは知らないが、
特に恐れる存在ではないのだ。
「え?ああ、凛を助けてくれたならお礼を言わなくちゃね。体痛そうよね、
早く目覚めると良いわね。」と左衣が言い終える前に、
向こうでガタガタ、と音がした。
行者が目を覚まして扉を開けた様だ。
肩膝立ちで、一瞬、こちらを見て身構える。
お互い身構えると
「だ、大丈夫?」と聞いてみる。
女2人で安心したのか、一瞬で雰囲気が変わる。
「助けられた様だな。」
凛は
あの声だ。あの時助けてくれた人だ。
と確信していた。
左衣が、
「薬は飲める?」と聞くと外が人の話し声でざわめいていた。
どうやら里のものが、とと様に事情を説明している様だった。
パタパタと温と数人里のものが入ってきた。
温は行者の姿を見ると、直ぐに何かに気がついた様だった。
そして、
「流れ着いたと、里のものが。」
と一言言った。




