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ぬば玉  作者: しんげつ
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六十八、繋ぐ

御山から圭の住む点族の岩山はそれほど遠くは無かった。

圭から「はげ山だからすぐわかる。」そう言われて目星をつけて向かった。

超のニイは驚異的に回復して、十日ほどで飛べるようになり

圭を乗せて御山を去っていった。何日か一緒に過ごすうちに、

点族の育てる超に一度乗せてやる。と圭が言い残していってくれていた。


岩山は赤茶色で確かに周りの緑の木に覆われた山々とは様子が違い、

明らかにたくさんの超が周りを飛んでいて、威圧すら感じる。

圭と渡りをつけるにはどうするのか考えていると、地に大きな影ができて、

空から「よう。碧。」とニイ乗った圭に話しかけられた。

目を細めて見上げると、右手のひらで影を作りながら

「乗れるか?」と聞いた。

「もちろんだ。恩人。」と言うと、風を伴って、少し先に着地する。

「乗ってくれ。あそこのてっぺんに、皆んないる。」

ニイにそっと乗る。

「重さは耐えれるか?」圭も自分も軽い部類だが何せ二人分だ。

「まだ行ける。」自信に満ちた言葉尻で安心した。

岩山へは左から旋回して入っていく。ニイの着地は意外とすんなりしていた。


「この超が丁度いいと思うぞ。」

すぐ隣にいた超に駆け寄る。ニイより小さいが首に白い斑尾がある超だった。

ニイは肉の塊を直ぐに貰っていて、また別の羽先が青みがかった超に向かう。


「見ててくれな。」と碧に告げると、その超の首にそっと左手を置いた。


かりっ

圭の右手の親指から血がでる。


「超は血で主人を覚える。」

圭はそう言うと、

嘴を開けて血液を垂らし込めた。

超とほおをお互い寄せる。


喉がぐるぐるとなり、碧は

鳩と同じ音だと思った。


「手をかせ。」

「利き手か?」と聞いて左手を差し出すと、圭は首をふって、

「反対を。」と言った。

反対の右手を差し出した瞬間に指先に小刀の切先がきた。

咄嗟に手を引く。

「おいおい。これくらいでビビるなよ。」


碧は、一瞬呆気に取られたが

「血か。」と目を見る。

「ああ。」圭は顎で、超にやれという仕草だ。


先ほど圭が、嘴に血を入れていたことを思い出す。

隣の超に血を飲ませて、ほおを寄せた。


「よし。では行こう!」

圭は、先に自身の血で繋いだ超の

首に腕を絡めるて

「はいっ。」

勢いよく飛び乗ると、瞬時に加速して羽を広げて飛び立つ。


風が舞、暴風が身体に叩きつけられた。

受け身で風をやり過ごして、碧は、

自分の超の首にそっと腕を絡ませる。


そのまま真似ると、三歩の加速で、力強く羽がひろがり

一気に上昇した。


羽が羽ばたくごとに身体が上下して飛ばされないように

首についた革を掴む。握りやすい太さで、

馬の手綱の短いやつと思えば容易かった。


圭が左に旋回をはじめた。まっすぐ飛ぶ術はわかるが曲がり方を

目を凝らして圭の動きをみる。身体を左に傾げて何か喋っていた。


まさか鳥と話せと?

超の言葉はわからないがひとまず、

「左へ!」と言ってみた。

すると身体が曲がり始めた。体を合わせて左に傾る。


「なるほどな。」

何度か旋回して、今度は右の旋回にはいる。

もちろん「右へ!」

と超に話しかける。

様子を見ていた圭は「やるなあ。」と遠くから立ち乗りで

叫んできた。


目下を見ると天府の配置がよくわかる。

街、門についた城壁、

近くの御山、

遠くに反対の歌仙山も今日は見えている。


天府の山城の後ろは崖で、海が見える高さまできた。

さすがに風が強くなる。


「碧!慣れたかあ?降りるぞー。」

そういうと木の葉のようにくるくると旋回しながら降りていく。

波を描くようにすれば良いと途中で気づいた。


高度が下がって、牧まで来ると羽を小刻みに揺らす。

身体が上下して上昇より下降のが難しい。

首に思わずしがみつく。

ズン。

地上に超の足がつくと、

ドーンと体が飛んでいった。受け身で、地上に足をつける。


「その受け身の動きは役に立つな。」

超の首を撫でながら圭は笑った。


同じように碧も首を撫でると、喉がゴロゴロとなっていた。

「これをやってくれ。」

傍の袋から干した鹿肉を渡した。


「好物か?」超の嘴に持っていくと

うまそうに食べる。


「猪も好きだが鹿肉の方が好きらしい。」

「肉はどうしているのだ。」

「調で塩漬けが上がってくることもあれば、

 自分たちで捌くこともあるな。塩漬けのあと天日干しもよいが、

 雪にねかせた方がうまいこともあるぞ。」

「人間と同じものを食うのか?」

「ああ。雑食だ。油断すれば人間も喰うぞ。

 主人と思い込ませなくてはダメだ。」

「なるほどな。どのくらい飛べる?」

「そうさなあ。一刻ほどかな。少し休めばニ刻ほどだが、

 人間の方が疲れる。一刻も人間は耐えられない。

 俺も一刻がギリギリ限界だ。」


圭そういうなら自分もそれくらいだろうと思った。

「一刻でどこまでいけるかわかるか?」


「海と山の方までとしかな。

 天府の支配下に目印があるわけではないからな。

 御山は見えただろ?馬だと結構かかるが超なら速い。

 御山までは超の速さが安定する頃には

 もうついている。」


馬では天府の門から二日をかけて帝が行幸に来る。

その距離がそれくらいで行けてしまうということだ。

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