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ぬば玉  作者: しんげつ
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六十六、書庫

於才は陶国にもどると,筑地に住む陶国の王に鳩を飛ばした。

凛と千明は馬を引きながら徒歩で向かっている。

わかりやすく手紙を飛ばしたのだ。


筑地の城は彼国に続く海に浮かぶ島々が見える海岸に近い。

山側の於才たちの里とは少し離れていた。

凛達は巻書簡も持っていたから問題はないが

一応よそ者だ。偶然、宿で居合わせただけだが、なんとなく応援したくなる

二人だった。


もちろん書庫はこの里にある。

そう、陶器の作成と共に秘密ではないが

扉は鍵がかけられている。随分前は葉のクニと呼ばれたときいている。

多羅の葉が多い、外海から渡ってきた人たちのクニであったらしい。

いつのまにかクニの境がなくなって、書庫だけ残ったらしいから

不思議だ。


竈の火に灰を被せていると、凛達は面接を終えて許可をもらえたと、

里長と喜んで帰ってきた。

「於才、彼らと知り合いか?」

「いえいえ、八俣の宿で偶然隣合わせになったまでで。」

何か不都合があるのかと心配な心持ちで答えた。

「彼らの住居がな。」

「焼き手と同じで良ければ、食事は出せますよ。」

毎朝、陶士たちに飯を炊く。二人くらい増えたところで変わらない。

「助かるよ。寝るところだが。」

さすがにそこまで考えていなく、凛たちを眺める。

「凛ちゃんは私と一緒でもいいけど?」と言った。

「じゃあ、千明さんはうちの館でも良いな?」

三人に確認するように聞く。

「はい、日中は書庫におりますので、夜に横にならせてもらえれば。

 暗くなってから星の観察もありますので、入り口に近い場所を当てがって

 もらえれば十分です。」

凛は二人の会話を聞いてホッとした。

食事の心配をしたことが殆どない自分を恵まれているのに気がつく。

「あの、これ筑地の湊で、魚を手に入れたので」

そう言って差し出した。ヘキの背にはまだ乗っている。

里長の館にはすでに置いてきた。築地は金が使えて克勝が

小さい金の粒と銀の粒持たせてくれたことに

感謝した。

大きすぎる粒はダメだと言った意味がよくわかる。使いにくいのだ。


「わあ、今日は海の魚だね。」於才は両手で受け取る。

世話は於才が成り行きですることになったのは想定外だが、

ここは、米も魚も手に入り易い。川では魚が網を掛ければすぐ取れるし、

多少作る量を増やせば良い。


「じゃあ、寝る部屋に案内するね。千明さんは?一旦館に戻る?」

「私は殆ど荷物はありませんので。。。。」

「書庫に案内するよ。まだ日も高い。」

そういうと、三人で多羅の森へ立って行く。

砂埃が少し立って入れ違いに、

「暑い。」と言いながら櫂が部屋へ入って来た。

見ると手に西瓜を抱えていた。

「大きいね。もう夏の盛りは過ぎてるよ?」

自分の顔以上の西瓜を覗き込む。

「何でかな。取れたらしいから。」

「みんなで食べようか。水につけた方がいいよね。」

片手で渡されてずしりとした重み感じて、よろけた。


「おい。」と体ごと櫂に支えられる。

櫂は西瓜を裏の水場に運んでくれた。

「明日は粉を取りに行く行くからな。少し遅くなる。」

「いつもの?」

陶器の材料に必要なのはわかってきていた。

そして密かに受け取らなくてはならないものだと言うことも。


「いつも思うけど、危なくないの?」

「特にはな。窯に火を入れる方がよっぽど緊張する。」

陶士らしい言葉が返ってくる。


櫂を近くで見上げる。濃いめの太眉の下の目が於才と合った。

グッと両腕で抱き締められてそのまま唇を寄せて、温かい。

と思った。

首筋に温かいまま櫂が下がっていく。

胸の谷間に舌を力強く入れてくると於才の力が抜けて

肩から衣が落ちた。









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