六十五、点族
雨音が止んだのを見計らって、岩陰から出て、超を見にいくと、
まだ倒れていたが、羽根の付け根が上下していて呼吸があった。
すっかり夜で、雲の間から半月を過ぎた月が見え始めた。
水を汲みに沢へ降りると虫たちは敏感だった。鳴き声がいっせいに始まる。
竹筒に水を入れると、岩陰に戻る。
ちょうど子供が目を覚ましたのか、起き上がるところだった。
「大丈夫か?」
ハッとしてこちらを見る。
「どこか痛くはないか?」
子供は、体を確認する様に自分を見て
「はい。」
と言った。
「あ!超は?俺は超に乗っていて。」
「岩の上だ。」指で上をさす。
「さっき見て来たが、意識はあった。
体が痺れていて座れないがな。たぶん。」
「上ですか?」
碧の目線の方向を見る。
「ああ。見にいくか?」
「はい。」起きあがろうとして
「痛ってー。」と身をよじった。
「何処かはぶつけているぞ。」碧が身体を覗き込むと、
もう一度、立ったまま、両手を握りしめて広げたり、
足首をまわす。
「大丈夫そうだな。」
「ああ。」普段、訓練している者の身体の動かし方だった。
上の岩へは少し厳しい斜面だが、普通についてくる。
岩の頂上にいくと、
横たわる超を見つけて、
「ニイ!」
と言って駆け寄った。
頭をもたげて、すぐに超が反応する。
「ニイ、どこか痛いか?」
超はグルルと喉を鳴らす。
「あ。羽の下だな。
痛いなこれは。」
碧が駆け寄ってみると、出血はひどくないのに、
腫れている。
「骨が折れているか?」
「うん。腫れているのが足の付け根だからな。」
「ばきっと折れているなら治りは早いがな。」
「よく知ってるね、兄ちゃん。」
ニイ、の音に反応する様にニイと呼ばれた超が反応する。
「俺は碧だ。」と名乗る。
「あ、俺は圭だ。こいつの名前はニイ。」
「点族か?」
「ああ、知ってるんだ。」
「超を育てる部族だろう?」
「うん。」
「子供かと思ったが。。。」圭の足元から頭上まで視線をずらすと、
「こう見えて、数え十六だ。点族は皆小さいからな。」
圭は、気がついて笑って言った。
歳は同じくらいか。
圭は碧の肩くらいしか身長はない。
超に乗るには軽いほうがいい。点族の容姿を利用した生業だった。
ニイは主人が来たからか、
起きあがろうとしていた。
「起こすの手伝ってくれるか?」
「ああ。」と頷くと、ニイの反対側に駆け寄る。
「骨がやられてる。」として、
固定したい方向に向けた。
木を支えにしたいという圭に木を削って渡す。
縛る麻布も渡すと器用に巻いていった。
「慣れてるな。」
「生まれてからずっと世話をしてるからな。雷は結構気をつけて居るんだが。」
「外海か?」
「ん、ああ。」
途端に、口を閉ざす。ニイを撫でている圭を見ながら、
外海に浮かぶ小島を伝えば、大して難しい話ではないだろうと思った。
「いつも雲が起きている方向と違ったからな。」沈黙を破るように一言、言うと、
「俺もそう思ったぞ!全くなあ。ニイに無理をさせちまった。
今の季節は雷が多いんだが、涼くなってから土砂降りはもうないと
思ってたんだが。引き返すのも勇気がいるわな。」
用務のことから話が逸らそうとして居ることに
碧は気づいていた。




