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ぬば玉  作者: しんげつ
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五十九、求める

宰相の克勝が姿を見せると、該月は寝台の上でホッとした顔でこちらを

向いた。

「どうであった?」と開口一番に聞かれて

「はい。もう殆ど形もなく、天上に召されておりました。」

と答える。綾人の遺体は罪人として鳥葬となった。生きたままの

鳥葬は、麻継は一番避けたかったに違いない。

それでも遺体はすぐに引き受けられなかった。


助ける術が無かったのか、過去を振り返ってはいけないと思いつつ考える。

垓月はあの日から、薬なしでは寝られなかったが、

神祇家が一同上げて、毎日祓いを行って少し落ち着いた様に見えた。

凛は水の里からの見舞いをきっかけに床上げしたと聞いた。


「藤見はまだ見つからぬか?」

「はい。一同上げて探しておりますが。」

「見つかったら、やはり。。。」

垓月は頭に呪禁を書き込んだハチマチの下から、上目遣いに見た。

「やはり、咎を受ける事になりましょう。」


「藤見は王廷ではなくてはならないと思う」

青白い顔で、垓月は真っ直ぐに言ってきた。


「物心ついてから雅殿が亀トをし藤見がト辞を読んで、久しい。

 それで上手くいっていたのだ。三毛殿は少しの間だと占トを願ったのが

 いけなかったのだ。」

後悔している垓月は幼子の様に見えた。


「確かに藤見は巫女として長年、神託を行ってきましたが。。。。」

「今、神託の儀式は雅殿と見習いの幼い巫女だが、正直信用出来るのか?

 もちろん雅殿は全面的に信頼しておるが、あの若い巫女では。。。

 次がいないと言うのはわかるが。。。。」

「凛を復活させては?」

「三毛殿は近いうちに御山であろう?伯父上の事があってから、

 もう触ってはいけない存在にしか思えん。」


言葉の端に凛を厄介者扱いしているのが読める。確かに、凛が来なければ

起こらなかった出来事だ。

御山の斎宮の交代はかなりの大事の時に行われ、

今の斎宮は一時の体調不良が治っていた。

克勝は不安になると指の爪を噛む癖のある垓月の様子をみながら

「藤見は不問、といたしますか?」と言った。

「い、良いのか?」一番欲しかった答えのはずだ。


「凛は神祇家に来てまだ間もないのです。凛を襲ったことを咎める臣下も

多くは有りません。幸い、綾人の件がかなり派手な印象で

藤見が手引きをしたと言うのは有耶無耶だと思います。現場に居た人間は多く無かった。息子の相生が藤見を捕えた時に周りにいたのは、凛の他には天狗の里の護衛だけです。」

「そうか。そうであるか。不問ととりなしてくれるか?」

垓月は呪禁の札を握りしめたまま聞いた。


「問題は、藤見を上手く見つける事と、戻った時に凛と会わせない様にする事が

 出来るのか、というとこでしょうな。」

「うむ。私とて、次期斎宮殿を無下にする気はない。」

寝所で正座に該月はなっていた。

「相生と凛には私から話を致しましょう。代わりと言ってはなんですが、

 王にお願いが御座います。」

「何だ?克勝の願いならばもちろん聞くぞ。」

「ありがとうございます。凛は遅かれ早かれ斎宮となる身です。本人は今、

 佐奈田殿のところで天の動きを毎日観察しております。

 天の動きは王への伝言でございます。もう少し深く学びたいと

 聞きおよび、一度、葉の国にある書庫に行かせてはどうかと。」

「葉の国書庫といえば、静一族のものだな?」部屋で過ごす学びが好きな王はすぐに

 答えた。


「はい。佐奈田殿からそこには彼国から持ち込んだ天に関する木簡や竹簡と言った

 巻物もあると聞いております。」

「母からもその書庫については聞いておる。王廷へ持ち込んだのは

 その一部であるとな。」

「王の名代として行かせてはもらえないのでしょうか?」

「しばらく三毛殿には王廷から離れてもらうと言う事だな?」

聡明な垓月は落ち着きを取り戻して考えている体だった。


「鏡殿か麻継殿の許可がもらえれば良いのですが。」

「それは問題ないであろう。母は日頃から書物をよく読み広い知識を持つ様に

 常々言うておる。ただ葉の国は今は隣国の陶の国が統治していると

 聞いているが」

「その様ですな。親書は陶国宛で宜しいかと。」

冷静に意見を述べる該月見て、

克勝は心の中で何かがカチリとなった気がした。




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